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日々の足跡
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チョコレート革命

・BL小説
・本編とは関係の無い番外編

この状況はやたら緊張する。

「楓さん、手を下ろしても大丈夫ですよ」
「庵は手馴れてるね」
「毎日、怪我しまくってますからね」
俺は手に持っていた包帯や薬を自分の鞄にしまった。
俺のその動作を楓さんはじっと見ている。そして俺と目があうとニコリと笑う。
俺の顔なんだけど何故か花がある・・・・中身が楓さんだからだろうか?
「さっきも言ってたけど、そんなに絡まれるの?」
「そうですけど、絡まれても買わなきゃいいし、
それにほとんどは自分から吹っかけてますね」
「庵のことだから『その吹っかける』のも誰かが困っていて助けてるんでしょ?」
「・・・・・・」
楓さんは俺の事をピタリとあててくる
さっきから緊張するのは、楓さんとのこの閉鎖的空間の所為もあるが、ほとんどは
この話し合いの中で俺という人間の見透かされている所為だ
正直、ここまでドンピシャにあてられる事がないので驚いてしまう
「楓さんは人間の本質を見るのが得意なんですね。
さっきから、あたり過ぎていて驚くばかりですよ」
「そう、なんか庵にそう言われると嬉しいな~」
俺の顔なのに、ニコニコと嬉しそうに笑うさまが可愛いと思ってしまう俺は
ちょっとヤバイ位置に行っちゃいそうなのか?
「そういえば、庵の家に連絡って入れなくて大丈夫なの?」
「それなら、母にメールで連絡しておきましたから大丈夫です」
「そっかー・・・・」

なんでこの人はそんな残念そうな顔をしてるんだ
俺が年下だから世話でもやきたいのか?

俺がそう考えている間に、楓さんは次を話題をふってきた。
「庵、食事はどうする?何でもいいなら今日は出前とるけど?」
「俺は何でも、近くにあるコンビニでカップラーメンでもいいですけど」
「だめだめ、そんな!ちゃんとした物を食べないと!」
「・・・・・はい」
何故か、物凄い剣幕の楓さんに押されてお寿司の出前になってしまった。
電話に話しかけていることからして特上なんて聞こえてくるけど・・・俺の幻聴だよな?

――― ガチャン!

「後30分くらいで出来るそうだから、その間にお風呂にでも入る?」
「・・・・・・・・・・・風呂、ですか?」
「うん、入るんだったらすぐに仕度できるけど」
「・・・・・・えーっと、入ってもいいですけど俺の体は楓さんの物なんですが」
「へ?」
俺が俺に小首を傾げている。可愛いとか思ってないで俺、説明しようよ!
「楓さんは俺に裸みられて大丈夫なんですか?目隠しして俺の体洗ってもいいですけど」
「庵、大丈夫だからお風呂入っておいでv」
楓さんはそう言うと、お風呂のスイッチを押して、戸棚からタオルとパジャマや下着をだしてくれた。
「はい、どうぞ」
「・・・・ありがとうございます」
こんなに簡単に他人に裸を見られていいのか?
男同士だからいいってことだよな・・・・俺ってば勘ぐりすぎて馬鹿みたいだ
風呂場の戸を開けると、一般家庭と比べたら広めの脱衣所があり、その置くにはガラス作りに
なっている片手扉が見えた。ガラスは向こう側が見えないようになっているが
風呂の中は電気がついており、ドボボボと大量のお湯にお湯があたっている音がする
俺は服を脱いで、手ぬぐいを手にして風呂場に入った。
入った瞬間に等身大の鏡が表れて自分の姿が映し出される。
お湯の煙で全部を見なかったが俺は慌てて、鏡から目をそらしてタオルを腰にまいた。
顔が羞恥心や驚きなどで熱くなっていくのを感じる
横に目をやると、白いタイル張りの内風呂と、その風呂の横に扉がある。
ガラスが曇って見えないので、俺は近づき手で曇りを消した。

「・・・・・外にも風呂がある」

俺は扉のノブを回して、外に出た。
少し肌寒い風が吹くがそんなの気にしていられない。
内風呂と同じタイル張りで作られた円状の風呂がある。周りは観葉植物などが置かれていた。
外の景色は先ほど見たものとは違う、山と月の情景が見えた。
俺はただただその光景に唖然とするしかなかった。

――― ここ、凄すぎだろ

周りには10階以上の建物がないのでこの景色を邪魔するものはなかった。
そして、この静けさ・・・・車の音も人のざわめき声も聞こえない
俺はライトアップされている風呂に腰までつかった。

「キモチイィ~」

そんな言葉が自然にでてきてしまうほど
この場所は居心地がよかった

「・・・・他の階もすっごいんだろうな~」

――― パシャ・・・・・

お湯を手の中で入れて月を手の水に映した。
お湯の波に月がユラユラとゆれる

「綺麗だな・・・・」

最高の癒しの環境だと思う

綺麗な情景 綺麗な整理された部屋 セキュリティー完備
他にも様々なオプション付の優れた物件だが、
俺はここを気に入りはしたが好きにはなれなかった。

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液晶テレビから聞こえる音とシャワーの水が流れる音が聞こえる
この部屋に俺以外の人がいる
その人が 庵 なんだということに
嬉しさがこみ上げてくる

「それにしても、庵ってば可愛いな~」
自分の姿であったが、俺の裸を見ることに少し緊張していた。
その様を思い出すたびに、可愛くて顔が緩んでしまう

ずっとこのままだったらいいのになーと思ってしまうが、そうもいかない
庵には家があるし、学校がある
早く元に戻ったほうがいいのだけれども・・・・・

「どうして、入れ替わってしまったんだろうか?」

入れ替わった場所は、あの大きな木の下。

庵を見た瞬間の

あの嫌な感覚と何か関係あるのかな

「楓さん、お風呂ありがとうございました」
脱衣所から庵が出てきた。
肩にはバスタオルをかけて、いつも俺が着ている白いパジャマを身に着けていた。
「楓さん、この制服どうすればいいですか?」
「あ、それは・・・・・そういえば、拾ったハンカチ学校に渡さなかった!」
「ハンカチ?」
俺は慌てて、自分の制服のポケットからハンカチを取り出して
汚れがないか確認しようとしたが、何処を探してもハンカチはみつからなかった。
「・・・・転んだ拍子に何処かにいっちゃったのかな?」
「楓さん、ハンカチ失くしたんですか?」
「俺のじゃなくて、庵と裏庭で会う前に校舎の横手の木にハンカチが引っかかって
 いたからそれをとったんだよ。真っ赤な赤いハンカチなんだけど、何処いったんだろう」
俺がその話をしている間、庵は黙っていた。
静かに聞いてくれてるんだと思って視線を向けたら、庵は真剣な眼差しで床を見て
何かを考え込んでいるようだった

「・・・・庵、どうしたの?」


「すみません、もしかしたら入れ替わったのは俺の所為かもしれません」

・・・・・え?

入れ替わったのが庵の所為?

「なんで、そんな・・・・」
「俺がいた裏庭の・・・あの木は噂があるんです」
庵は俺から視線を外したまま、話を進めていく。
「あの木は大正の頃からあると言われている大木です。
あの木の下で昔、ある夫婦が小さなすれ違いをして、夫が死んだと言われています。
その事からあの木の下である事をしてはいけないと言われているんです。
学校の生徒はその噂を試すために、何度かカップルで肝試しや冗談半分で行っていました
けど、噂は噂で・・・・本当のところはどうなのか」
「庵、木の下で何をしちゃいけないの?」

庵はその言葉をきくと、一度こちらに視線を向けたが
また床に視線をおとして、ゆっくりと唇を動かして言葉を紡いだ




「・・・・・木の下で、一緒にいる相手を疑ってはいけない」



「死んだ夫は妻を信じられませんでした。
もしも、夫が妻を信じていれば免れたことなんです。
その事から、この下では決して他人を疑ってはいけない。
そうした場合、その相手は『呪い』を受ける」


木の下にいる相手を疑ってはいけない

相手を疑えば呪いがかかる






「・・・・・庵は俺の何かを信じられなかったの?」







「・・・・・・・・・・・・」


「俺、何か庵に嘘ついちゃったかな?」

その言葉に庵は微かに肩がゆれた

けれど

顔は下を向いたまま

俺をみてくれない


「楓さんは何も・・・・・何も悪くありません」


―――  ピーンポーン ピーンポーン

インターホンが静寂の中に鳴り響いた。

「お寿司がきたみたいだね」

俺は制服を近くにあるソファの背もたれにかけて玄関に向かった。
後ろをチラリと見ると、庵はまだ床に座ったままだった


庵が俺を疑ったということは
俺の何かが庵を不安にさせているという事だ

扉を開けて寿司を玄関前に置いてもらい、お金を払った。

寿司を両手で持ち、庵がまつリビングに向かう

庵は俺の何を不安に思い 

疑ってるんだろうか?

そんな疑問がぐるぐると内で巡りながらも、俺は寿司を机において
お茶を準備する。庵は机に座ってもらっている。
俺も前の席に座って庵に小皿としょうゆを渡した。

「さ、食べようか。お腹すいたし」
「はい、頂きます」

こんなにも君との距離が近いのに

君が遠く感じる
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