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日々の足跡
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チョコレート革命

・BL小説
・本編と関係ない番外編

弁当の中身を全て食べて、俺は空を仰いだ。
昨日も樹達と馬鹿騒ぎをして見ていた空

「栄治さん・・・・」
「ん、何?」
俺が栄治さんに視線を向けると、栄治さんは俺に笑いかけている。
楓さんといい栄治さんといい、笑うと本当に美貌が浮き彫りになる。
「栄治さんは、この学校に通っていて楽しいですか?」
「んーまぁ~、可愛い女の子もいるし、セクシーな英語の先生やツンデレな可愛い後輩もいて
 まー楽しいとは思うけど」


「・・・・・楓さんは楽しそうですか?」

「・・・・・・・・」

楓さんは確かに尊敬できる素晴らしい人だと思う

たくさんの人に崇められ 尊敬される

学校を代表する人だとは知っているが

毎日、笑っている たくさんの人に囲まれている




けど   楓さんは   独りだった




「楓さん、俺のこと学校までいつも迎えに来てくれます。
雨の日も雪の日も風が強い日でも、どんな時でも待っていてくれます。
前に雨が強くて待っていた楓さんがびしょ濡れになって
言った事があるんです 『もう、迎えに来なくても大丈夫ですよ』 って
・・・・・楓さん、何て言ったと思いますか?」

「・・・・・・・・・」


『 それだけは きけない 』   

「そう言われました。そのときは慌てましたよ。
俺って別に何処にでもいる学生ですよ、しかも髪が赤くて喧嘩っ早い馬鹿な野郎
そんな奴、ほっとけばいいのにって思った・・・・けど、その考えが変だったんですね」


「どんな風に?」



「楓さんも 何処にでもいる学生の一人 なんですよ」


「楓さんは、ただちょっと綺麗な容姿で、頭がよくて、礼儀正しくて、要領がいい学生。
学校って言う閉鎖空間の中で彼は人の言葉に縛られて、息苦しかったと思います。
俺は、それに気づいてあげられていなかった」

『庵、今日ね。家庭科で編み物習ったんだ』
『男でも編み物なんて習うんですか!!!』
『・・・・ごめん、嘘。ちょっと挑戦してマフラーなんてものを作ってみたんです』
『へ?なんで、マフラーなんか』
楓さんがチラッと俺を見た後に
学生鞄と一緒に持っていた紙袋の中に手を入れて
その取り出した物を俺の首に、そっと置いた。

『庵の首元が寒そうだったから』

そういって笑った彼はとても無邪気だった
俺よりも一つ年上とか 他の学校の先輩とか 
そんな事 全て忘れて
ただこの人が俺のために作ってくれたという事が嬉しかった


「今、こんな風に俺と楓さんが入れ替わったのは幸か不幸かわかりませんが、
俺の学校には馬鹿なワンコが二匹と煩い子猫が一匹います。
世話のやける奴らですが、一緒いたら楽しいし落ち着けます。
楓さんがそいつらといて、学校生活を楽しめたらいいなーって思うんです。
今まで気づいて上げられなかった分、学校外であの人が本当に笑えたら
俺は・・・・・嬉しいなって思います」

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心臓が止まる






そんな衝撃


・・・・というのはこういう事なんだろうか?


俺の楓の印象は 綺麗な人形 だった

出会った当初から綺麗な容姿をしていた
凛とした姿に誰もが目を引かれた
時を増すごとにその視線の数も増えていった
けれど、彼は決して表情を表に出すことはなかった
ただ其処に飾られている一体の人形のように
人と孤立してる存在だった

俺は幼馴染という名目上よく楓の傍にいた
それは、彼の傍には決して人は寄り付かないからだ
人は自分よりも秀でているものに
憧れるか敵意を表す
そんな視線にも楓は何も思わない

『楓は悲しい事とか嬉しいことってないの?』

中学の頃、俺はそんな疑問を楓にきいた

あまりにも表情を崩さない楓
俺はそれまで感情を表に出すのが下手なだけなんだと思った
人ともあまり関わる事がないからきっと苦手なんだろうと

けど 違っていた






『そんなもの感じたことないけど』






『・・・・・え?』

『そんなのあって、何か特でもあるの?』

彼は本当に 人形 だった


数ヶ月前まではな


「栄治さん!すいません、楓さんを・・・立派な幼馴染をただの学生なんて!」

「いいじゃねー、だって楓も ただの人間 だもんな~」

俺が笑っているので、楓の外見をした庵も笑っていた

どんなきっかけで二人が出会ったのかは知らない

けれど

楓が何で彼に惹かれたのかはわかった


『俺は、庵の事が好きなんだよ!』


そういって真っ直ぐと見つめる瞳は生きる力を発していた


庵が見上げている空を仰ぐ
風が強いが心地よい日差し


たくっ、庵君の世話ぐらいしてやるよ

---------------------------------------------------------------------------------------

「・・・・・庵ってば本当に凄いんだな~イデッ!!!」
樹君の頭に樹君の幼馴染の雄飛君のゲンコツがおりた。
「樹、楓さんにそんな口の利き方はないんじゃないの?」
「んだよ、雄飛。今は楓さんじゃなくて、庵だろーが!
ここはため口で話したほうが普通ってもんだろー!」
「・・・・樹に正論をはかれるとは」
「同感です。雄飛先輩!」

「なんだよ、お前らはーーーーーーーーーーー!!!!」

「えーっと、落ち着きませんか?」

現在は中庭に設置されている机と椅子に腰掛けて、
樹君と雄飛君と江田君の四人でお昼を食べている
俺の目の前にあるパンは、樹君が4限目が終わってからダッシュで購買まで
買って来てくれたので山の様にある
彼が、購買から戻ってきたときには腕にはパンがたくさんあった。

「楓さん、食べなグッ!!!」

樹君の隣に座っている雄飛君が頭をはたき
樹君の前の席に座っている江田君が足を踏んだらしい
今日何度目になるのかわからない、彼の叫び声がまた中庭に響いた

「・・・・この、鬼、悪魔、お前らなんて地獄に落ちればいいんだ~」
樹君は机に突っ伏しながら、うな垂れ、
その光景を見て横にいる雄飛君が溜息をつく。
「あーはいはい、樹が庵さんとちゃんと言えればな~」
「るっさい!それぐらいできるはーーーー!!!」
「あっそ・・・・」
なんだか、面白いコンビだなーと俺は二人に釘つけになったが
「あ、庵さん。馬鹿がさっきから煩くてすみません」
そういって、俺の横にいる江田君は謝ってくる。
江田君は可愛い子なんだよな
目が大きくて、背も俺よりも低くて、髪もさらさらで。
樹君と付き合っているらしいけど、少し心配になる

庵はこの子にときめいたりするんだろうか?

胸の奥がチリチリとしだす
俺はそんなマイナスな思考をとめるために、皆に疑問をなげかけた。

「皆はどうして、俺が楓だって受け入れたの?」

三人は俺を見ていたが、それぞれの顔を見合わせた後にまた俺を見た。
そして、始めに樹君が言葉を発した。

「庵が俺に嘘つくはずないから」

「中学から一緒だけど、庵って嘘ついたら罪悪感からか人の目みなくて
判りやすいんだよね~」

「確かに、新田先輩は言い難いこととかは、嘘は言わずに交わしますね」






「・・・・・・皆、庵の事信じてるんだね」


俺がそういうと、樹君が笑いながら言った


「だって、俺の友達だからな」


俺の学校にはそんな友達だと言える人はいるだろうか
こんな暖かな空間なんてあっただろうか

人の温もりがこんなに優しいと感じる


庵はこの輪の中で生きてきたんだね


それが何故か嬉しくもあり、悲しくもあった
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