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日々の足跡
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チョコレート革命

・BL小説
・本編とは関係ない番外編

―― ドク ドク ドク・・・・・

心臓の音が酷く大きくきこえる。

―― ガタタタン ガタタタン

頭上からは電車が走り通る音が聞こえてくる

靴裏で踏む土と草の音、俺の横で流れる川の水音
そして、俺の目の前で汚い笑みを浮かべる男達の声

あの校門の前では目立ちすぎたので
俺はこいつ等を、この人気の少ない川原に連れ出した。

そして俺は、こいつ等に一番ききたい事をきいた。

「何故、『俺』を襲った」

「あれれ~?前に言わなかったっけ?」
「忘れたから近づいたの?あははは、マジ笑えねー」
「馬鹿なんしょ、教えってやったら~♪」

「もう一度きく。何故、『俺』を襲った!」

真と呼ばれていた男が俺に一歩一歩近づいてくる
「前にも言ったよな『楓様に近づくなって』」
「・・・・・か、えで?」
「そ、三宮司楓様。あの人は、お前が近寄っていい人じゃねーんだよ!」
「・・・っ!」
襟首を勢いよく掴まれて、わき腹が痛む
俺がわき腹を庇っているのに気づいたこいつは俺にある提案をしてきた
「もう一度だけチャンスをやろうか?」
「・・・・っ、チャンス?」
「そう、ラストチャンス」
そういうと男は俺を放すと地面を人差し指で指し示した。

「ここで、俺に土下座しろよ。そうしたら、今回のことは許してやるぜ?」

「お前っ・・・・こんな事してただですむと思ってるのか!」
「くははは、何だよ・・・その脅し、マジで笑える。
俺達知ってるんだぜ、お前に何したってお前は楓様には絶対にチクらないって」

―― ・・・・・・え?

「噂かと思っていたけど、本当にチクらねーもんな~素晴らしいね~
まぁ、理由は同感できるぜ『そんな事で楓様に迷惑かけたくない』って気持ちはな」

―― ドク ドク ドク・・・・

「・・・・・迷惑を・・・かけ・・・・・たくない?」

「そうそう・・・・・で、土下座するの、しないの?」

庵はよく喧嘩で怪我をしているけど、それは全部


―― 俺の所為だったのか?――


いつも守りたいと思っていたのに
守られていたのは 俺の方 だった

――ザリッ
ひんやりと湿った土の感触が手のひらに伝わってくる
腰を曲げるとズキリとわき腹が痛むが、俺は徐々に頭を低めた

真の後方から男達二人の笑い声が聞こえてくる

『マジで土下座してやんのー!!!」
『あははは、だっせー!!!』

腹が煮え返るくらいの怒りが沸いてくる
俺の目の前にいる男はうっすらと口に笑みを浮かべた
男の顔が俺の頭上で見え
そして、男の左足が痛めているわき腹めがけて
蹴りつけてきた。

「―っ!!!!!」

勢いよく蹴られた所為で体が吹っ飛び、傷口が開き
押さえている手の隙間から血がじわりと服に滲んでくる

― くそっ、俺の馬鹿が!

「お前って本当に・・・・馬鹿だな?こんなんで許すわけねーだろうが」
真は俺の押さえている方の手を掴み、仰向けにすると
俺の上にのしかかって首を締め出した
「はっ、はな・・・っ!!!」
「あははは、苦しそう。もう一掃、死んじゃってくんねー邪魔だからさ」
首を絞める腕を外そうと手を掴むが、傷の痛みと息苦しさが手伝って力が入らなかった

くそ、目の前が霞んでくる・・・・・





「楓ぇえーーーーーーー!!!!!」



―・・・・え?

俺の名を呼ぶ声が聞こえると思うと
男の手が俺から離れて、体内に一気に空気が入り込んできた

「―っ、・・・げほっ!!!」

男はもう俺には目もくれず、近づいてくる人物に目を奪われていた。

「・・・・・楓さ」
「退け、邪魔だ!!!」

―― バシッ!!!

俺の上にのしかかっていた男は目の前から消え、
変わりに俺の顔が泣きそうな顔で、俺を見ていた

「・・・っ、庵・・・ゴホッ!・・・はーはー・・・」
「なんで一人でこんな所に来るんですか!馬鹿かアンタは!!!」
「・・・・い・・おり?」

―― ・・・・・・もしかして、怒ってる?
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心臓が止まるかと思った





心配で樹に連絡をとってみれば、楓さんが三馬鹿と何処かに行ったと聞いて
心臓が耳のすぐ傍にあるほどに脈打つ音が大きくなって

不安で不安で
俺の所為で楓さんに何かあったらって

楓さんを川原で見つけたと思ったときには
もう、ボロボロに傷ついていて
なのにあいつ等はまだこの人を・・・・・

後、少しでも遅かったらどうなっていたかと思うと

考えただけでも

ひんやりと冷たい手が俺の頬に寄せられる
上から下へとゆっくり、優しく撫でてくる
その撫でている相手は苦しいだろうに、痛いだろうに
嬉しそうに笑みを浮かべていた。

「・・・・庵、ごめんね。傷が広がっちゃった。
病院行って早めに直そうかと思ったんだけど」
「いいんですよ!そんなこと!!!」
俺がそう怒鳴りつけると俺の腕の中で横たわっている楓さんは
目を見開かせて「・・・ごめん」と苦しそうな顔をしている

「・・・・あ」

胸の奥がズキリと痛む・・・・

俺はそんな表情が見たいんじゃなくて

「・・・っ、違う・・・本当はそんな事が言いたいんじゃないんだ」
「・・・・いお」
「はーい、お二人ともお取り込み中失礼しマースなんだけど、
救急車が着いたから、中に入ってきてよ」
樹の指差す方向には救急車がいつの間にか待っていた。
「何度呼んでも返事しないからさ~」
「悪かったよ、樹」
俺はもう一度、楓さんを見た
「楓さん、もう・・・・無茶なことしないで下さい」
「・・・・うん、ごめんね」
そういってまた、寂しそうに笑った
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救急車に乗り込むと設置されているベッドに寝るように指示された。
予想以上に止血が酷い所為だろう
俺が寝ている横では庵が心配そうな顔で俺を見ていた
体温が徐々に下がっているはずなのに
庵が握ってくれる手だけが血が通っている様に暖かい

「・・・・・・なんか、幸せだなー」
「何、何ですか楓さん」
「んー、なんでもないよ」
小さな声で呟いた所為か、庵にはこの呟きが聞こえなかったらしい
救急車はけたたましいサイレンの音を鳴らしながら病院に向かった



病院につき傷の手当てを受けるが、傷が酷い所為で数週間入院することになった。
今は部屋が空いてない所為で一人部屋のベットで寝ている

「なんだか凄い大事になっちゃったね」
「・・・・楓さんが無茶するからですよ」
楓はベットの傍に椅子を置いて、りんごを剥いてくれている。
しゅるしゅると手際よくりんごを剥いていくが、庵の表情は川原で会った時のまま
怒ったような表情のまま

―― ・・・・どうしたら、機嫌直してくれるんだろう?

しーんと静まり返った室内に声を発したのは庵が先だった。
「楓さん、無闇に知らない人に着いて行かないで下さいね」
「うん・・・・・ごめんね。気をつける」
俺がそう謝って庵を見ると、庵は何故か悔しそうに両手を震わせていた。
「・・・・庵?」
「・・・・すいません、俺は怒れる立場じゃありませんね。
あいつ等が楓さんに怪我をさせたのは俺の所為だ」

「本当は俺が傷をおって、俺がそこに寝ているはずなのに!!!」

「・・・・・庵の所為じゃないだろう?」

俺は庵の手からりんごと包丁を外してすぐ傍にある机に置いた。
その動作を庵は静かに見ている

「庵が狙われたのは俺の所為なんだろう?あいつ等が全部話しくれたよ」
「・・・・・そう・・・ですか」
庵は下を向いたまま俺を見ていた
その行動が何故か歯がゆくて、両頬に手をそえて庵の顔を俺に向かせた。
「なんで俺に言わなかったの?」
「・・・・・・」
「俺に迷惑がかかるから?」
「・・・・っ、それは・・・・」
庵の顔からは苦渋の表情が見えた。
俺は庵の頬から手をすっと離して、カーテンを開けて空を見上げた。
外は暗く、町の明かりが輝いている。
「ねぇ、庵。俺って庵にとって何かな?ただのお荷物?」

「ち、違います!!!」
俺の後方で椅子が倒れる音がした。
ガラスが鏡の効果を表して俺には庵の戸惑った慌てた表情
そして、庵には前髪で隠れた俺の顔が見えている
「じゃ、なんであいつ等の事も怪我の事も言ってくれなかったの?」
「それは、楓さんに迷惑かけたくなかったんだ!」
「俺は別に庵が困っているなら何だって手を貸してやりたいんだ!
庵が力を貸して欲しいって困ってるって言ってくれれば、俺は!!!」
「駄目だ!!!」

俺はゆっくりと後ろを振り返り庵を見上げた。

庵は今にも泣きそうな顔で俺を見下ろしてる

「・・・・庵」
庵は両手で顔を隠して、俺に叫んできた。
「そんなの駄目なんですよ!楓さんは俺だけに優しいわけじゃなくて
皆に優しくて平等に接していて、けど、俺はそれを勘違いしそうになって
だから、だから・・・・少しでもそう自覚するために、俺は・・・・
自分に違うと言い聞かせてるのに、周りはそれは違うって言って
俺にそう思い込ませようとする。
もし、それが本当でも俺はそんな優しさに甘えちゃいけないと思ったんだ!」

庵の心の叫びに
心が打ち震える
好きな人が悲痛な声をあげているのに嬉しいなんて
キチガイにもほどがあるけれど

顔を隠している庵の両手掴んでどかし、彼の顔をまっすぐと見据えた

脅えた瞳

けれど とても澄んだ綺麗な瞳だった

「なんで、俺に甘えちゃいけないの?」
「・・・・っ~~~」
「なんでか教えてよ、ねっ・・・・庵?」
俺が庵に微笑むと庵は顔を赤くさせて俺から顔を背ける
逃げようとする庵に、俺は掴んでいる両手で押さえる
「・・・・楓さん、放して」
「話すまで放してあげない、この態勢って結構傷が痛むんだ」
「・・・・あ」
俺がそういうと、優しい庵は気まずい顔をしながら俺に捕まった。

俺は庵にもう一度きく

「庵、なんで?」

庵は戸惑いながらも、その言葉を口にした

「俺は楓さんをとても尊敬しています。
そんな、楓さんが俺を好きだっていうのが勘違いだと、
・・・・・俺は立ち直れないから」

「・・・・そっか」

庵も俺と同じで不安だったんだね

「あの木の下でも、その事を考えていました。
だから、その所為で俺達は入れ替わったんだと思うんです。
・・・・・・すみません」
「いいよ・・・・全然、ていうか庵と入れ替われて良かったと思うし」
「・・・・え?」
庵が驚いた顔で俺を見てくる
その顔が妙に可愛くて俺は庵をベットの端に座らせてそっと抱きついた。
「・・・・・楓さん?」
「俺は庵の事が好きだよ。何をされても迷惑だなんて思わないほどに
ていうか逆にかけて欲しいぐらいだよ。
庵、もっと俺を頼って、何でも話して、・・・・俺はそれが嬉しいから」
「でも、俺はただの他校の後輩で」

「違うよ、庵は別格なんだよ。庵はね、俺の特別だよ」

庵から離れて彼の瞳を覗き込む
まだ、その瞳は不安で揺れている

「だから、他校の後輩じゃないんだよ」

俺がそういうと、楓は俺の片手に触れて目を瞑り「はい」と嬉しそうに言った。
俺もそれを見て庵に笑いかける

庵は今日は俺の付き添いで病院に泊まり、眠りについた。

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目が覚めると白い天上が見えた。

あぁ、そうか
昨日は病院に泊まったんだっけ

起き上がろうとするとわき腹がずきりと痛んだ

「・・・・え?」

俺は自分の脇を見る
すると、服が私服ではなく病院内で着ているもの

昨日、楓さんが着ていた服?

「・・・・・・あ!!!!」

俺はベットから降りて、洗面台にある鏡を見た。
包帯で巻かれた腕、赤い髪、見慣れた顔

「元に戻っている」

俺は足音をたてづに楓さんが寝ているベットに近づいた。
一人部屋だともう一つ、予備でベットを用意してもらえた。
といっても、今回は何故か特別にらしいが・・・・

楓さんが寝ている
何処も怪我をしていない
幸せそうな顔で寝息をたてている



― 違うよ、庵は別格なんだよ。庵はね、俺の特別だよ


― だから、他校の後輩じゃないんだよ



カーテンの向こう側から眩しい朝日の光を感じる
今日が始まる

昨日とは違う 時間が



「楓さん、ありがとう」
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