日々の足跡
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ホワイト革命
・BL小説
・チョコレート革命のつづき
・本編とは関係ない番外編
・BL小説
・チョコレート革命のつづき
・本編とは関係ない番外編
楓さんからチョコを貰って、気づけば3月に入っていた。
カメラ型のチョコ。楓さんは型崩れしていると言っていたけど
綺麗に整っていて、食べるのが勿体無い
けど、食べないとチョコレートが勿体無い
しぶしぶ、賞味期限を考えて俺はチョコを食べた。
けれど記念にチョコの写真を撮った。
一生の記念に・・・
楓さんにお返しとして何を欲しいかと何度も聞いても
『なんでもいいよ』の一言で終わってしまう
俺は楓さんが何を好きか知らない
だから其処から調べないといけないんだよなー
こういうときに、新聞部でよかったと思う自分も自分かな?
--------------------------------------------------------------------------------
3月に入ってから庵と帰ることがめっきり減った
俺が迎えに行っても先に学校を出ていて会えないのだ
携帯で連絡をとろうにも、俺は未だに庵の携帯アドレスを知らないので、それも無理
樹君達に聞こうと思えば、庵と仲の良い樹君も一緒に先に帰るらしい
運よく会えた江田に聞くが「わからない」の一言なんだけど・・・・
「二人で何をしてるんだろう・・・」
二月中は一緒に帰れたのに、3月に入った途端に会えなくなって・・・・
「ホワイトデーのお返しを何でもいいとか言っちゃったから・・・・?」
それで、樹君を誘って俺に会わないように先に帰ってる!
二人で帰るうちに友情以上の気持ちが芽生えて、今頃二人は!!!
俺は頭を左右に振って、今考えたことを振り払った。
「いやいや、そんな事。あるわけないって!」
ホワイトデーは明日。
溜息が自然と出てくる。
―― 庵に会いたいよ 一目でもいいから見たい 触れたい
俺はまた溜息をついて、街中をトボトボと歩いていた。
空は曇っていて今にも雨が降りそうだ。
けど・・・・家に帰りたいとも思わない
ふと、カメラ屋の写真が見えた。
庵って自分で撮った写真を自分で処理してるんだよねー
庵の写真を見せてもらった事があるけど、
なんだか吸い込まれる感じがするんだよなー
この感覚って、視界いっぱいに海と空が広がっているときと似ている
自分よりも大きなものに対面した時の、
あのなんともいえない感覚と・・・
ふと、カメラ屋の中のウィンドウの一眼レフカメラを見た。
そういえば、庵・・・・こんなカメラ欲しがっていたよな
今使ってるのは部費で買ったものらしいから
「これを買ったら、庵は喜んでくれるかな?」
物で釣るなんて最低だとは思うけど
どうすれば庵が俺の傍にいてくれるのか判らない
周りの人間は俺を特別視するのに
庵だけは俺を普通の学生の一人として見てくれる
それは嬉しいことなんだけど
「・・・・・今はすっごく複雑だな」
俺は苦笑して、ガラスから手を放した。
すると、カメラ屋の入り口が開き人が店から出てくる。
俺は扉の開いた音が聞こえて自然に視線がそちらに向いた。
相手はこちらを見ずに、もう一人の相手を見ていて気づいていない。
「これで全部買い物すんだのか?」
扉が自然と壁に音をたててはまり、二人の姿が見えた。
「まーな、なんかデザインがピン!とこなくってさ」
「・・・・変なところでこだわりあるよなーお前って」
出てきた二人の客は 庵と樹君だった
「そうかな?樹、ほどじゃないけど」
「そーですか!」
二人は俺に気づくことなく、帰路に立っていく
そんな二人の背を俺はボーゼンとした顔で見つめていた
声をかければ良かったのに
何故か怖くてかけられなかった
------------------------------------------------------------------------------------
「庵、今日は楓さんに会いに行くんだろう?」
「ん、そうだけど」
今日は14日。楓さんには3月に入ってからあまり会っていない
久しぶりに会いに行くので今は少し緊張している。
楓さん、学校にいるだろうか?
「約10日は楓さんと会ってないんだよなー、庵って・・・・」
「・・・・そうだな、それぐらい会ってないか」
「という事はその間、楓さんはフリーだったって事か~」
「・・・・遠まわしの言い方はやめて、はっきり言えよ樹」
「んー、楓さん今頃他の奴にホワイトデーのお返しを
貰うなりあげるなしてるかもな~って思っただけなんだけどなー」
―― 他の奴にホワイトデーのお返しを・・・・
「もしかしたら、今行ったら庵は邪魔者かもなって
それでも庵は、楓さんに会いに行くの?」
「・・・・・・チョコを貰ったんだ返すのは当たり前だろ」
俺は樹を振り切って教室から廊下にでて玄関にがむしゃらに向かった。
何も考えないように、何も気づかないように・・・・
教室に置いてきぼりをくらった樹は、壁に背を預けて窓から玄関を見ている。
赤い髪が風をきって駆けて行くのが見えた。
「あれくらいの意地悪いっても罰はあたらねーほど、
楓さんはお前を好きなんだぞ」
約一ヶ月前、庵がまだ入院している頃に見舞いに行き
早々に庵の病室から出て行ったが樹はその場に忘れ物を
とりに行った・・・だが、楓先輩が見舞いに来ていて
庵に手作りのチョコを渡したのだ・・・しかも、告白までして
なのに、あの鈍感は
そんなチョコを『友情チョコ』なんぞいいやがって
『義理チョコ』よりも性質が悪い気がするのは俺だけが
今回はそんな庵に自覚してもらうためにはっぱをかけてみた
「さーて、庵はどうでるんだろうな?」
楓さんの学校に行くには電車を乗りついでいかなければいけない。
前は楓さんが俺の学校まで迎えに来てくれたんだよなー
ほぼ毎日、この距離を行き来して
ガタン ガタタタン
電車が揺れる
『今行ったら庵は邪魔者かもな』
俺の心が揺れる・・・・
-------------------------------------------------------------------------------------------
ブルルルル― ブルルルル―
携帯をマナーモードにしているので、振動が伝わってきた。
開けるとメールが一通。
相手は入れ替わった時にアドレスを教えて貰った樹君からだった。
「メールか?」
「あぁ・・・・庵の友達の樹君からだ・・・・」
えーっと・・・・・
庵がそっちの学校に向かってます。
楓さん、まだ学校にいますか?
「・・・・・・・庵がこっちに向かってる!」
「庵君来るの!」
来てくれるのは嬉しいんだけど、昨日の庵と樹君の光景が頭から離れてくれない。
話かければよかったのに、二人が仲良く話していて
俺に見せない顔の庵がいて
話しかけていいのか戸惑った
中学からの友達で気心もしれているんだからショウガナイケド
昨日はあの後、樹君に嫉妬しっぱなしで・・・・・
あーもう、本当に俺ってば心が狭すぎる!!!
「楓、来るんなら生徒玄関で待っていた方が良くないか?
あいつ、1日此処にいたけどまだ中を把握できてなかったから」
「そ、そうだね!生徒玄関で待ってよう!!!」
「さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!」
「ネーミングセンス、最悪」
「の、割には顔は嬉しそうですけど楓~」
「るっさい!」
俺は栄治とそう話しながら教室を出た。
---------------------------------------------------------------------------------
心臓がバクバクと妙な音をたてて脈打つ。
今、何て言ってた?
『さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!』
楓さんの愛しの君って・・・・楓さんの好きな人のことだよな?
俺はうる覚えの記憶を辿って楓さんの教室にたどり着いた。
他校の制服なので目立つと思っていたが、ここの学校は放課後になると
人がほとんどいなくなるので、特にそんな心配もいらなかった。
見覚えのある廊下や窓から見える景色、
此処だと思い俺は扉に手をかけようとしたが
話の内容を聞いて、開けるに開けられなった
楓さん達は前の扉から出て玄関に向かっている
俺は後ろの扉に手をかけようとした状態のまま
視線だけ二人の背中に向けた
楓さんがいる
いるのに

楓さんの嬉しそうな表情をみていたら
怖くて
声が
かけられなかった
------------------------------------------------------------------------------------------------------
「・・・・庵、遅いなー」
生徒玄関の前で待つこと60分。
一向に庵が来る気配が無い。
栄治は用事があるので先に帰り、今は俺だけ
生徒玄関の前にある階段の端に座って待つけど
庵が来ない・・・・・
ここまで約20分かかるくらい、
もう着いていても可笑しくないのに
「樹君がメールくれたのは庵が学校でた15分くらい後だって
返事はきたし、もう来ていても可笑しくないんだけど・・・・・」
まさか、迷子になった!
まさか、また絡まれて喧嘩!
怪我して動けない!!!
「・・・・・どうしよう、樹君に連絡とって貰った方がいいかな
それとも、学校内で俺のことを探してる・・・とか?」
俺は腰を上げて、学校内にもう一度入った。
念のために外部の人間が中に入るときに使う下駄箱を見る。
ここは栄治が一応のために教えておいたと言っていた。
覚えていれば使ってるかもしれない。
俺は一つずつ確認していくと、
一つだけスリッパの変わりにスニーカーがあった。
俺は急いで学校内を探索する。
1階の空き部屋、図書館、保健室、体育館だが1階にはいない
俺は2階に上がり教室を見て回っただが、庵の姿が見当たらない。
3階の教室も見るがいない、残るは俺のクラスのある4階のみ。
俺はゆっくり一つずつ教室を見ようと思ったが、
もし見知らぬ学校に長時間いて安心できるのは
入ったことのある教室
俺は他の教室は見ずに、自分のクラスのドアを開けた。
―― ガラッ!!!
教室の中でポツンと窓の手摺に座り、
外の景色を見ている髪の赤い学生が一人いた。
「庵!!!」
「あ、楓さん」
俺は扉を閉めて、庵に向かって歩いていった。
「いつからいたの?」
庵の手をとると、ひんやりとして冷たい
「ついさっき着きました」
俺にそういって笑う庵
「嘘。手がとっても冷たいよ、ほら窓閉めて椅子に座って」
庵は俺がそういうと言われるまま、窓を閉めて近くの席に座った。
「さっき樹君から『庵がこっちに向かってる』って連絡があって
生徒玄関前で待ってたのに、なかなか会えないからさ・・・・
また怪我でもしてるのかと思って心配したよ。よかった無事で」
「・・・・心配かけてすいません、裏口から入ってきたので」
「・・・・・そっか」
しーんとする静かな静寂を崩したのは庵が先だった。
「楓さん、会えましたか?」
「・・・・・え、会えたって誰に?」
「・・・・・あー、えっと」
庵がとても言いにくそうに天を仰いで、どう言おうかと考えている。
「誰のこと言ってるの、庵?」
「えっと、実はさっき聞いちゃったんですけど・・・・・・
楓さんの好きな人が今日来るんですよね?」
「なっ!!!!!」
俺は余りの驚きに顔を真っ赤にして椅子から飛び上がった。
「ままままま、まさか庵!!!」
「はい・・・・あの、聞いてました。
実は楓さんが此処の教室にいる時に・・・・すみません」
俺はあまりの驚きに口をパクパクと金魚みたいに動かしていた。
聞かれてた?さっき、俺は何を言っていた!!!?
-----------------------------------------------------------------------------
「楓、来るんなら生徒玄関で待っていた方が良くないか?
あいつ、1日此処にいたけどまだ中を把握できてなかったから」
「そ、そうだね!生徒玄関で待ってよう!!!」
「さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!」
「ネーミングセンス、最悪」
「の、割には顔は嬉しそうですけど楓~」
「るっさい!」
-----------------------------------------------------------------------------
『さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!』
愛しの君=好きな人
もしかして、それで庵は感づいちゃった?
俺が庵を好きだって事をがばれて
それで、庵は俺を・・・さ、避けてた?
「あの、あの・・・あのね庵、その『愛しの君』っていうのは」
背中や掌に冷や汗がビッショリとわきでてくる
「大丈夫ですよ」
「・・・・へ?」
「ちゃんとわかってます。楓さんは今日はその好きな人に
会うのが先決なんですよね。
だから、その今日はこれだけ渡して帰ります。」
楓はそういうと、右手に持っていた紙袋を俺に渡した。
中には、少し大きめの本っぽいものが入っている。
「・・・・・これって」
「チョコ美味しかったです。お礼と言っては何ですが
ホワイトデーのお返しで、俺の撮った写真集を作ってみました。
前に楓さんが気に入ってくれた物とかも入れてあります。
・・・・自己満足の作品だけど喜んで貰えたら嬉しい」
「あ、ありがとう・・・・庵!!!」
―― 庵が撮った写真集!!!
「すっごく嬉しいよ//////」
俺そういうと、庵は寂しそうに笑っていた
「よかった」
―― ズキッ!
・・・・・・あれ?
「・・・・・庵?」
「もう用は済んだので帰ります」
「え!ちょ、ちょっと待って!!!」
久しぶりに庵と二人っきりなのに!もう、帰る!!!?
「駄目でも、帰らないと・・・楓さんの邪魔になっちゃうから」
「邪魔って何?全然、邪魔じゃないよ!!!」
俺は必死に楓の腕を掴んで、帰ろうとする庵をとめている。
「けど、楓さんの好きな人が来るんじゃ・・・・?」
「それは・・・・それは、栄治が冗談で『庵』の事をそう呼んだだけで
・・・・俺は、今日は庵をずっと待っていたんだよ」
「・・・・俺を」
「そう、庵を待っていたの!
久しぶりに会えたんだからさ、もっとゆっくりして行って」
「・・・・楓さん」
「ん、何?」
「早とちりして、すみません」
「いいよ、全然。悪いのは全部、栄治だから」
俺はそう言うと、庵は苦笑していた。
けど、さっきみたいな悲しそうな顔をしていないので安心した。
「庵、今から暇?」
「・・・・バイトもないので、暇といえば暇ですが、どうかしましか?」
「俺の家においでよ。今日はカメラ持ってきてるだろうし」
俺は庵の鞄ともう一つ大きめの鞄をさしてそういった。
庵はそれを見て、くすりと笑う
「じゃ、お邪魔してもいいですか?」
「うん、おいで。庵は何時でも大歓迎だからさ!」
「楓さんは俺をのせるのが上手いですね」
赤い夕日の中俺は庵と肩を並べて、俺の家に向かった。
電車に乗ると、庵は疲れたのか寝息をたてて寝ている。
そんな庵を可愛いなーと思いながら、
暇なので庵から貰った写真集を見た。
ほとんどの写真は風景ばかりだが
所々に鳥や犬といった動物が出てくる
最後のページをめくると、俺はクスリを笑った。
樹君もこの写真集を作るのを手伝ったと言っていた。
多分、この写真を撮ったのも、ここに入れたのも
彼の仕業なんだろうな・・・・

「可愛い・・・・」
心の中で俺は樹君に感謝しながら
写真を見つめていた。
END
ここまで読んでくれてありがとうございます!
お疲れ様でした!!!
カメラ型のチョコ。楓さんは型崩れしていると言っていたけど
綺麗に整っていて、食べるのが勿体無い
けど、食べないとチョコレートが勿体無い
しぶしぶ、賞味期限を考えて俺はチョコを食べた。
けれど記念にチョコの写真を撮った。
一生の記念に・・・
楓さんにお返しとして何を欲しいかと何度も聞いても
『なんでもいいよ』の一言で終わってしまう
俺は楓さんが何を好きか知らない
だから其処から調べないといけないんだよなー
こういうときに、新聞部でよかったと思う自分も自分かな?
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3月に入ってから庵と帰ることがめっきり減った
俺が迎えに行っても先に学校を出ていて会えないのだ
携帯で連絡をとろうにも、俺は未だに庵の携帯アドレスを知らないので、それも無理
樹君達に聞こうと思えば、庵と仲の良い樹君も一緒に先に帰るらしい
運よく会えた江田に聞くが「わからない」の一言なんだけど・・・・
「二人で何をしてるんだろう・・・」
二月中は一緒に帰れたのに、3月に入った途端に会えなくなって・・・・
「ホワイトデーのお返しを何でもいいとか言っちゃったから・・・・?」
それで、樹君を誘って俺に会わないように先に帰ってる!
二人で帰るうちに友情以上の気持ちが芽生えて、今頃二人は!!!
俺は頭を左右に振って、今考えたことを振り払った。
「いやいや、そんな事。あるわけないって!」
ホワイトデーは明日。
溜息が自然と出てくる。
―― 庵に会いたいよ 一目でもいいから見たい 触れたい
俺はまた溜息をついて、街中をトボトボと歩いていた。
空は曇っていて今にも雨が降りそうだ。
けど・・・・家に帰りたいとも思わない
ふと、カメラ屋の写真が見えた。
庵って自分で撮った写真を自分で処理してるんだよねー
庵の写真を見せてもらった事があるけど、
なんだか吸い込まれる感じがするんだよなー
この感覚って、視界いっぱいに海と空が広がっているときと似ている
自分よりも大きなものに対面した時の、
あのなんともいえない感覚と・・・
ふと、カメラ屋の中のウィンドウの一眼レフカメラを見た。
そういえば、庵・・・・こんなカメラ欲しがっていたよな
今使ってるのは部費で買ったものらしいから
「これを買ったら、庵は喜んでくれるかな?」
物で釣るなんて最低だとは思うけど
どうすれば庵が俺の傍にいてくれるのか判らない
周りの人間は俺を特別視するのに
庵だけは俺を普通の学生の一人として見てくれる
それは嬉しいことなんだけど
「・・・・・今はすっごく複雑だな」
俺は苦笑して、ガラスから手を放した。
すると、カメラ屋の入り口が開き人が店から出てくる。
俺は扉の開いた音が聞こえて自然に視線がそちらに向いた。
相手はこちらを見ずに、もう一人の相手を見ていて気づいていない。
「これで全部買い物すんだのか?」
扉が自然と壁に音をたててはまり、二人の姿が見えた。
「まーな、なんかデザインがピン!とこなくってさ」
「・・・・変なところでこだわりあるよなーお前って」
出てきた二人の客は 庵と樹君だった
「そうかな?樹、ほどじゃないけど」
「そーですか!」
二人は俺に気づくことなく、帰路に立っていく
そんな二人の背を俺はボーゼンとした顔で見つめていた
声をかければ良かったのに
何故か怖くてかけられなかった
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「庵、今日は楓さんに会いに行くんだろう?」
「ん、そうだけど」
今日は14日。楓さんには3月に入ってからあまり会っていない
久しぶりに会いに行くので今は少し緊張している。
楓さん、学校にいるだろうか?
「約10日は楓さんと会ってないんだよなー、庵って・・・・」
「・・・・そうだな、それぐらい会ってないか」
「という事はその間、楓さんはフリーだったって事か~」
「・・・・遠まわしの言い方はやめて、はっきり言えよ樹」
「んー、楓さん今頃他の奴にホワイトデーのお返しを
貰うなりあげるなしてるかもな~って思っただけなんだけどなー」
―― 他の奴にホワイトデーのお返しを・・・・
「もしかしたら、今行ったら庵は邪魔者かもなって
それでも庵は、楓さんに会いに行くの?」
「・・・・・・チョコを貰ったんだ返すのは当たり前だろ」
俺は樹を振り切って教室から廊下にでて玄関にがむしゃらに向かった。
何も考えないように、何も気づかないように・・・・
教室に置いてきぼりをくらった樹は、壁に背を預けて窓から玄関を見ている。
赤い髪が風をきって駆けて行くのが見えた。
「あれくらいの意地悪いっても罰はあたらねーほど、
楓さんはお前を好きなんだぞ」
約一ヶ月前、庵がまだ入院している頃に見舞いに行き
早々に庵の病室から出て行ったが樹はその場に忘れ物を
とりに行った・・・だが、楓先輩が見舞いに来ていて
庵に手作りのチョコを渡したのだ・・・しかも、告白までして
なのに、あの鈍感は
そんなチョコを『友情チョコ』なんぞいいやがって
『義理チョコ』よりも性質が悪い気がするのは俺だけが
今回はそんな庵に自覚してもらうためにはっぱをかけてみた
「さーて、庵はどうでるんだろうな?」
楓さんの学校に行くには電車を乗りついでいかなければいけない。
前は楓さんが俺の学校まで迎えに来てくれたんだよなー
ほぼ毎日、この距離を行き来して
ガタン ガタタタン
電車が揺れる
『今行ったら庵は邪魔者かもな』
俺の心が揺れる・・・・
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ブルルルル― ブルルルル―
携帯をマナーモードにしているので、振動が伝わってきた。
開けるとメールが一通。
相手は入れ替わった時にアドレスを教えて貰った樹君からだった。
「メールか?」
「あぁ・・・・庵の友達の樹君からだ・・・・」
えーっと・・・・・
庵がそっちの学校に向かってます。
楓さん、まだ学校にいますか?
「・・・・・・・庵がこっちに向かってる!」
「庵君来るの!」
来てくれるのは嬉しいんだけど、昨日の庵と樹君の光景が頭から離れてくれない。
話かければよかったのに、二人が仲良く話していて
俺に見せない顔の庵がいて
話しかけていいのか戸惑った
中学からの友達で気心もしれているんだからショウガナイケド
昨日はあの後、樹君に嫉妬しっぱなしで・・・・・
あーもう、本当に俺ってば心が狭すぎる!!!
「楓、来るんなら生徒玄関で待っていた方が良くないか?
あいつ、1日此処にいたけどまだ中を把握できてなかったから」
「そ、そうだね!生徒玄関で待ってよう!!!」
「さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!」
「ネーミングセンス、最悪」
「の、割には顔は嬉しそうですけど楓~」
「るっさい!」
俺は栄治とそう話しながら教室を出た。
---------------------------------------------------------------------------------
心臓がバクバクと妙な音をたてて脈打つ。
今、何て言ってた?
『さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!』
楓さんの愛しの君って・・・・楓さんの好きな人のことだよな?
俺はうる覚えの記憶を辿って楓さんの教室にたどり着いた。
他校の制服なので目立つと思っていたが、ここの学校は放課後になると
人がほとんどいなくなるので、特にそんな心配もいらなかった。
見覚えのある廊下や窓から見える景色、
此処だと思い俺は扉に手をかけようとしたが
話の内容を聞いて、開けるに開けられなった
楓さん達は前の扉から出て玄関に向かっている
俺は後ろの扉に手をかけようとした状態のまま
視線だけ二人の背中に向けた
楓さんがいる
いるのに
楓さんの嬉しそうな表情をみていたら
怖くて
声が
かけられなかった
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「・・・・庵、遅いなー」
生徒玄関の前で待つこと60分。
一向に庵が来る気配が無い。
栄治は用事があるので先に帰り、今は俺だけ
生徒玄関の前にある階段の端に座って待つけど
庵が来ない・・・・・
ここまで約20分かかるくらい、
もう着いていても可笑しくないのに
「樹君がメールくれたのは庵が学校でた15分くらい後だって
返事はきたし、もう来ていても可笑しくないんだけど・・・・・」
まさか、迷子になった!
まさか、また絡まれて喧嘩!
怪我して動けない!!!
「・・・・・どうしよう、樹君に連絡とって貰った方がいいかな
それとも、学校内で俺のことを探してる・・・とか?」
俺は腰を上げて、学校内にもう一度入った。
念のために外部の人間が中に入るときに使う下駄箱を見る。
ここは栄治が一応のために教えておいたと言っていた。
覚えていれば使ってるかもしれない。
俺は一つずつ確認していくと、
一つだけスリッパの変わりにスニーカーがあった。
俺は急いで学校内を探索する。
1階の空き部屋、図書館、保健室、体育館だが1階にはいない
俺は2階に上がり教室を見て回っただが、庵の姿が見当たらない。
3階の教室も見るがいない、残るは俺のクラスのある4階のみ。
俺はゆっくり一つずつ教室を見ようと思ったが、
もし見知らぬ学校に長時間いて安心できるのは
入ったことのある教室
俺は他の教室は見ずに、自分のクラスのドアを開けた。
―― ガラッ!!!
教室の中でポツンと窓の手摺に座り、
外の景色を見ている髪の赤い学生が一人いた。
「庵!!!」
「あ、楓さん」
俺は扉を閉めて、庵に向かって歩いていった。
「いつからいたの?」
庵の手をとると、ひんやりとして冷たい
「ついさっき着きました」
俺にそういって笑う庵
「嘘。手がとっても冷たいよ、ほら窓閉めて椅子に座って」
庵は俺がそういうと言われるまま、窓を閉めて近くの席に座った。
「さっき樹君から『庵がこっちに向かってる』って連絡があって
生徒玄関前で待ってたのに、なかなか会えないからさ・・・・
また怪我でもしてるのかと思って心配したよ。よかった無事で」
「・・・・心配かけてすいません、裏口から入ってきたので」
「・・・・・そっか」
しーんとする静かな静寂を崩したのは庵が先だった。
「楓さん、会えましたか?」
「・・・・・え、会えたって誰に?」
「・・・・・あー、えっと」
庵がとても言いにくそうに天を仰いで、どう言おうかと考えている。
「誰のこと言ってるの、庵?」
「えっと、実はさっき聞いちゃったんですけど・・・・・・
楓さんの好きな人が今日来るんですよね?」
「なっ!!!!!」
俺は余りの驚きに顔を真っ赤にして椅子から飛び上がった。
「ままままま、まさか庵!!!」
「はい・・・・あの、聞いてました。
実は楓さんが此処の教室にいる時に・・・・すみません」
俺はあまりの驚きに口をパクパクと金魚みたいに動かしていた。
聞かれてた?さっき、俺は何を言っていた!!!?
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「楓、来るんなら生徒玄関で待っていた方が良くないか?
あいつ、1日此処にいたけどまだ中を把握できてなかったから」
「そ、そうだね!生徒玄関で待ってよう!!!」
「さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!」
「ネーミングセンス、最悪」
「の、割には顔は嬉しそうですけど楓~」
「るっさい!」
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『さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!』
愛しの君=好きな人
もしかして、それで庵は感づいちゃった?
俺が庵を好きだって事をがばれて
それで、庵は俺を・・・さ、避けてた?
「あの、あの・・・あのね庵、その『愛しの君』っていうのは」
背中や掌に冷や汗がビッショリとわきでてくる
「大丈夫ですよ」
「・・・・へ?」
「ちゃんとわかってます。楓さんは今日はその好きな人に
会うのが先決なんですよね。
だから、その今日はこれだけ渡して帰ります。」
楓はそういうと、右手に持っていた紙袋を俺に渡した。
中には、少し大きめの本っぽいものが入っている。
「・・・・・これって」
「チョコ美味しかったです。お礼と言っては何ですが
ホワイトデーのお返しで、俺の撮った写真集を作ってみました。
前に楓さんが気に入ってくれた物とかも入れてあります。
・・・・自己満足の作品だけど喜んで貰えたら嬉しい」
「あ、ありがとう・・・・庵!!!」
―― 庵が撮った写真集!!!
「すっごく嬉しいよ//////」
俺そういうと、庵は寂しそうに笑っていた
「よかった」
―― ズキッ!
・・・・・・あれ?
「・・・・・庵?」
「もう用は済んだので帰ります」
「え!ちょ、ちょっと待って!!!」
久しぶりに庵と二人っきりなのに!もう、帰る!!!?
「駄目でも、帰らないと・・・楓さんの邪魔になっちゃうから」
「邪魔って何?全然、邪魔じゃないよ!!!」
俺は必死に楓の腕を掴んで、帰ろうとする庵をとめている。
「けど、楓さんの好きな人が来るんじゃ・・・・?」
「それは・・・・それは、栄治が冗談で『庵』の事をそう呼んだだけで
・・・・俺は、今日は庵をずっと待っていたんだよ」
「・・・・俺を」
「そう、庵を待っていたの!
久しぶりに会えたんだからさ、もっとゆっくりして行って」
「・・・・楓さん」
「ん、何?」
「早とちりして、すみません」
「いいよ、全然。悪いのは全部、栄治だから」
俺はそう言うと、庵は苦笑していた。
けど、さっきみたいな悲しそうな顔をしていないので安心した。
「庵、今から暇?」
「・・・・バイトもないので、暇といえば暇ですが、どうかしましか?」
「俺の家においでよ。今日はカメラ持ってきてるだろうし」
俺は庵の鞄ともう一つ大きめの鞄をさしてそういった。
庵はそれを見て、くすりと笑う
「じゃ、お邪魔してもいいですか?」
「うん、おいで。庵は何時でも大歓迎だからさ!」
「楓さんは俺をのせるのが上手いですね」
赤い夕日の中俺は庵と肩を並べて、俺の家に向かった。
電車に乗ると、庵は疲れたのか寝息をたてて寝ている。
そんな庵を可愛いなーと思いながら、
暇なので庵から貰った写真集を見た。
ほとんどの写真は風景ばかりだが
所々に鳥や犬といった動物が出てくる
最後のページをめくると、俺はクスリを笑った。
樹君もこの写真集を作るのを手伝ったと言っていた。
多分、この写真を撮ったのも、ここに入れたのも
彼の仕業なんだろうな・・・・
「可愛い・・・・」
心の中で俺は樹君に感謝しながら
写真を見つめていた。
END
ここまで読んでくれてありがとうございます!
お疲れ様でした!!!
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