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・読む前に・
1.本編「素直な彼・困った彼」とは関係ありません。
2.庵と楓が入れ替わります。
3.BL小説です。
4.シリアス(死や血の表現が少しあり)
以上を理解できましたら、下へどうぞ。
青い空から降り注がれる陽射しは温かく優しい。
そんな明るさが不意に遮られた。
「おーい。庵、寝てるのか?」
「起きてるよ、樹」
俺の前の席に樹が座っているのでそちらに視線を向けた。
回りを見渡すと席を立ち、皆帰宅しようとしていた。
「お前さっきから空ばっかり見てて動かねーから、寝てるのかと思ったよ」
俺はそれを聞いて苦笑した。
「目を開けたままかよ。ちょっと、空を眺めていただけだよ」
そんな俺を樹はそわそわした感じで見ている。
・・・・なんだ?
「なぁ、庵。2月14日って誰かと会う約束したか?」
「・・・・いや、してないけど。なんだ、どうかしたのか?」
俺のその言葉を聞くな否や樹は座っていた椅子から勢いよく立ち上がり
「嘘だろ!!!」となんとも大きな声で叫びだした。
おかげで、現在俺と樹はクラスに残っている生徒の視線にざっくり刺されている。
俺は溜息をついて樹を席に座らせた。
「・・・・いいから座れ。そして、落ち着け。2月14日って言えばバレンタインデーだろ?
なんで俺がそんな日に誰かと約束してなくて、お前に叫ばれなくちゃいけないんだ」
樹はそんな俺の言葉を聞くと、俺から目をそらして「ヤベー」なんて顔をしている。
――― たく、何だっていうんだ。一体・・・・
「俺に恥を一瞬でもかかせたんだ、友達なら吐けるよな?っていうか吐けよ馬鹿樹」
「・・・・なんか、その言い方ムカつくんだけど、・・・けど、しゃーねなぁ」
その樹の「しゃーねなぁ」って顔が、俺が此処で一肌二肌脱がねばという使命感が
見て取れて、俺はうんざりした。
「例えば、『美人で癒し系で気が利いて、お金持ちなんだけどそんなの自慢しない
俺達よりも一つ年上の人』なんかとは、なーんにも約束も話もしてないのか?」
「・・・・・・お前、もしかして楓先輩の事をいってるのか?」
「うわぉv さっすが庵~!!!わかってるじゃん!」
「・・・・・それだけ特定の人物の特徴言われて、わかんない方が馬鹿だろうが!」
「まぁ、そうだな。・・・・で、何にも話してないのか?」
「その日も普通に放課後こっちに来るみたいな事は言っていたけどな」
「わ!マジで楓さん来るの!」
――― なんでコイツがこんなに喜んでるんだ?
「お前、とうとう江田から楓先輩に乗り換えたのか?」
「ちちちちちちっ違うって!えっと、えーっとな、楓先輩って高嶺の華って感じで
こんな風に知り合えて嬉しいな~なんて」
真っ赤な顔をして慌てる姿を見ていると、俺の頬に笑みが浮かぶ。
「・・・・・浮気だと、江田にちくるネタができたな」
「ば、馬鹿野郎!!!そんな事したら、俺がお仕置きされるだろーがぁ!!!」
「いや~愛って偉大だな、樹」
「い~お~り~様!ちょっと黙っててよね!マジでお願いだから!!!」
「あーはいはい」
俺はそう生返事をしながら自分の鞄に教科書やノートを入れて、立ち上がった。
鞄を掴み俺は教室の扉を開ける。樹は困った顔をしながらそのまま席についている。
もうすぐ、1階下の教室にいる彼氏がくるのだろう。
俺は樹に向かって手を振った。
「じゃーな、樹。また、明日」
「おう!って、本当にさっきのこと江田に黙っとけよ!」
「わかってるって・・・・お前も、あんまり俺で遊ぶなよ。
俺みたいな奴を楓先輩が相手してくれるわけないんだからな」
―――― バンッ・・・・・・・
教室の扉が閉まり、教室にはもとのざわめきが戻った。
次々、クラスの生徒が帰っていく中、樹は庵が出て行った扉を見つめていた。
「・・・・庵の鈍感野郎が」
そんな教室で発した小さな言葉は
ざわめきの中に消えていった
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この学校には一本の大木がある
それは、大正の頃からあると言われている大きな木
その木にはある小さな噂があった
昔々、仲の良い夫婦がいました。
夫は働き者でとても思いやりのある優しい人
妻はこの村では評判の美しい人でした
そんな夫婦は毎日幸せに暮らしていました
しかし、村での働き分だけでは暮らしていく事が難しくなり
夫は妻をおいて隣の町に出稼ぎに行ってしまったのです
そして、何日も何週間もたってから夫は村に帰ってきました
妻の元に帰ろうとする夫は村人にある事を聞いてしまいます
「あなたの妻は浮気をしている」
相手は自分が出て行った数日後にこの村に来た見目の美しい若者
話によれば、妻はその若者とよく会い仲良くしていると聞きます
夫はその話を聞き「やはり」と思い、家路から離れた山の中に入っていきました。
妻は美しい。そして、若いくて器量もいい。
そんな人と自分が一時でも一緒になれた奇跡を嬉しく思い
そして、一人になった孤独感と裏切られた憎しみで胸が一杯になり
男は仕事用の刃物で首を切り、死んでしまったのです
そして、その後。夫を探しに来た妻がその姿を見つけるのです。
本当は妻はずっと夫を待っていました。
若い男の事など眼中になく、ずっと夫だけを待っていました。
ほんの小さなすれ違いが二人を引き裂いてしまったのです。
この木はそんな無念の夫の血と、
嘆き悲しんだ妻の涙で出来たものだと言われている
ザァアアアアアアアアアア――――・・・・・・・・・・
風で大木の葉が揺れ 緑色の葉が踊り落ちる
夫が死んだのは妻を苦しめたくなかったから
けれど、妻はその所為で嘆き悲しんだ
この話は 人が人に期待し 信用したばかりにおきた 悲劇の惨劇
俺にはそう思えた
そんな木の下ではある事をしてはいけない
もし、してしまうと
『呪い』がかかるという