樹視点。
小話中の小話(番外編)
空を見上げると青い空と眩しいほどに輝く太陽そして、強い日差しが降り注いでいる。
横を通り過ぎる女の子が日傘をさしているのが正直羨ましいが、オレは男だから我慢。
帽子で我慢。
江田と待ち合わせをしている場所はベンチがあり木陰がある、そして・・・・
予想通り女の子と間違われて男に言い寄られているが、
綺麗な笑顔で一刀両断したのが見える
何を言ったのかわからないがもう顔が真っ青になって駆け出していった。
「何を言ったんだ・・・・」
聞きたくないが聞きたいような・・・・
そんなときに、江田がオレに気づいて手を振っている
周りが羨んでいるのは好機か転機。
「遅いぞ」
江田はそう言うけど笑っていた。
オレもつられて笑ってしまう。
この後、二人でアイマルマルを見に行く予定だ。
楽しみだー、けどこの状況だけでもオレは幸せなんだろうな。
「樹、いくぞ。ほら」
手を引く手が温かくて、心からほっとする
オレの方が年上なんだけどな
・BL小説
・チョコレート革命のつづき
・本編とは関係ない番外編
カメラ型のチョコ。楓さんは型崩れしていると言っていたけど
綺麗に整っていて、食べるのが勿体無い
けど、食べないとチョコレートが勿体無い
しぶしぶ、賞味期限を考えて俺はチョコを食べた。
けれど記念にチョコの写真を撮った。
一生の記念に・・・
楓さんにお返しとして何を欲しいかと何度も聞いても
『なんでもいいよ』の一言で終わってしまう
俺は楓さんが何を好きか知らない
だから其処から調べないといけないんだよなー
こういうときに、新聞部でよかったと思う自分も自分かな?
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3月に入ってから庵と帰ることがめっきり減った
俺が迎えに行っても先に学校を出ていて会えないのだ
携帯で連絡をとろうにも、俺は未だに庵の携帯アドレスを知らないので、それも無理
樹君達に聞こうと思えば、庵と仲の良い樹君も一緒に先に帰るらしい
運よく会えた江田に聞くが「わからない」の一言なんだけど・・・・
「二人で何をしてるんだろう・・・」
二月中は一緒に帰れたのに、3月に入った途端に会えなくなって・・・・
「ホワイトデーのお返しを何でもいいとか言っちゃったから・・・・?」
それで、樹君を誘って俺に会わないように先に帰ってる!
二人で帰るうちに友情以上の気持ちが芽生えて、今頃二人は!!!
俺は頭を左右に振って、今考えたことを振り払った。
「いやいや、そんな事。あるわけないって!」
ホワイトデーは明日。
溜息が自然と出てくる。
―― 庵に会いたいよ 一目でもいいから見たい 触れたい
俺はまた溜息をついて、街中をトボトボと歩いていた。
空は曇っていて今にも雨が降りそうだ。
けど・・・・家に帰りたいとも思わない
ふと、カメラ屋の写真が見えた。
庵って自分で撮った写真を自分で処理してるんだよねー
庵の写真を見せてもらった事があるけど、
なんだか吸い込まれる感じがするんだよなー
この感覚って、視界いっぱいに海と空が広がっているときと似ている
自分よりも大きなものに対面した時の、
あのなんともいえない感覚と・・・
ふと、カメラ屋の中のウィンドウの一眼レフカメラを見た。
そういえば、庵・・・・こんなカメラ欲しがっていたよな
今使ってるのは部費で買ったものらしいから
「これを買ったら、庵は喜んでくれるかな?」
物で釣るなんて最低だとは思うけど
どうすれば庵が俺の傍にいてくれるのか判らない
周りの人間は俺を特別視するのに
庵だけは俺を普通の学生の一人として見てくれる
それは嬉しいことなんだけど
「・・・・・今はすっごく複雑だな」
俺は苦笑して、ガラスから手を放した。
すると、カメラ屋の入り口が開き人が店から出てくる。
俺は扉の開いた音が聞こえて自然に視線がそちらに向いた。
相手はこちらを見ずに、もう一人の相手を見ていて気づいていない。
「これで全部買い物すんだのか?」
扉が自然と壁に音をたててはまり、二人の姿が見えた。
「まーな、なんかデザインがピン!とこなくってさ」
「・・・・変なところでこだわりあるよなーお前って」
出てきた二人の客は 庵と樹君だった
「そうかな?樹、ほどじゃないけど」
「そーですか!」
二人は俺に気づくことなく、帰路に立っていく
そんな二人の背を俺はボーゼンとした顔で見つめていた
声をかければ良かったのに
何故か怖くてかけられなかった
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「庵、今日は楓さんに会いに行くんだろう?」
「ん、そうだけど」
今日は14日。楓さんには3月に入ってからあまり会っていない
久しぶりに会いに行くので今は少し緊張している。
楓さん、学校にいるだろうか?
「約10日は楓さんと会ってないんだよなー、庵って・・・・」
「・・・・そうだな、それぐらい会ってないか」
「という事はその間、楓さんはフリーだったって事か~」
「・・・・遠まわしの言い方はやめて、はっきり言えよ樹」
「んー、楓さん今頃他の奴にホワイトデーのお返しを
貰うなりあげるなしてるかもな~って思っただけなんだけどなー」
―― 他の奴にホワイトデーのお返しを・・・・
「もしかしたら、今行ったら庵は邪魔者かもなって
それでも庵は、楓さんに会いに行くの?」
「・・・・・・チョコを貰ったんだ返すのは当たり前だろ」
俺は樹を振り切って教室から廊下にでて玄関にがむしゃらに向かった。
何も考えないように、何も気づかないように・・・・
教室に置いてきぼりをくらった樹は、壁に背を預けて窓から玄関を見ている。
赤い髪が風をきって駆けて行くのが見えた。
「あれくらいの意地悪いっても罰はあたらねーほど、
楓さんはお前を好きなんだぞ」
約一ヶ月前、庵がまだ入院している頃に見舞いに行き
早々に庵の病室から出て行ったが樹はその場に忘れ物を
とりに行った・・・だが、楓先輩が見舞いに来ていて
庵に手作りのチョコを渡したのだ・・・しかも、告白までして
なのに、あの鈍感は
そんなチョコを『友情チョコ』なんぞいいやがって
『義理チョコ』よりも性質が悪い気がするのは俺だけが
今回はそんな庵に自覚してもらうためにはっぱをかけてみた
「さーて、庵はどうでるんだろうな?」
楓さんの学校に行くには電車を乗りついでいかなければいけない。
前は楓さんが俺の学校まで迎えに来てくれたんだよなー
ほぼ毎日、この距離を行き来して
ガタン ガタタタン
電車が揺れる
『今行ったら庵は邪魔者かもな』
俺の心が揺れる・・・・
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ブルルルル― ブルルルル―
携帯をマナーモードにしているので、振動が伝わってきた。
開けるとメールが一通。
相手は入れ替わった時にアドレスを教えて貰った樹君からだった。
「メールか?」
「あぁ・・・・庵の友達の樹君からだ・・・・」
えーっと・・・・・
庵がそっちの学校に向かってます。
楓さん、まだ学校にいますか?
「・・・・・・・庵がこっちに向かってる!」
「庵君来るの!」
来てくれるのは嬉しいんだけど、昨日の庵と樹君の光景が頭から離れてくれない。
話かければよかったのに、二人が仲良く話していて
俺に見せない顔の庵がいて
話しかけていいのか戸惑った
中学からの友達で気心もしれているんだからショウガナイケド
昨日はあの後、樹君に嫉妬しっぱなしで・・・・・
あーもう、本当に俺ってば心が狭すぎる!!!
「楓、来るんなら生徒玄関で待っていた方が良くないか?
あいつ、1日此処にいたけどまだ中を把握できてなかったから」
「そ、そうだね!生徒玄関で待ってよう!!!」
「さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!」
「ネーミングセンス、最悪」
「の、割には顔は嬉しそうですけど楓~」
「るっさい!」
俺は栄治とそう話しながら教室を出た。
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心臓がバクバクと妙な音をたてて脈打つ。
今、何て言ってた?
『さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!』
楓さんの愛しの君って・・・・楓さんの好きな人のことだよな?
俺はうる覚えの記憶を辿って楓さんの教室にたどり着いた。
他校の制服なので目立つと思っていたが、ここの学校は放課後になると
人がほとんどいなくなるので、特にそんな心配もいらなかった。
見覚えのある廊下や窓から見える景色、
此処だと思い俺は扉に手をかけようとしたが
話の内容を聞いて、開けるに開けられなった
楓さん達は前の扉から出て玄関に向かっている
俺は後ろの扉に手をかけようとした状態のまま
視線だけ二人の背中に向けた
楓さんがいる
いるのに
楓さんの嬉しそうな表情をみていたら
怖くて
声が
かけられなかった
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「・・・・庵、遅いなー」
生徒玄関の前で待つこと60分。
一向に庵が来る気配が無い。
栄治は用事があるので先に帰り、今は俺だけ
生徒玄関の前にある階段の端に座って待つけど
庵が来ない・・・・・
ここまで約20分かかるくらい、
もう着いていても可笑しくないのに
「樹君がメールくれたのは庵が学校でた15分くらい後だって
返事はきたし、もう来ていても可笑しくないんだけど・・・・・」
まさか、迷子になった!
まさか、また絡まれて喧嘩!
怪我して動けない!!!
「・・・・・どうしよう、樹君に連絡とって貰った方がいいかな
それとも、学校内で俺のことを探してる・・・とか?」
俺は腰を上げて、学校内にもう一度入った。
念のために外部の人間が中に入るときに使う下駄箱を見る。
ここは栄治が一応のために教えておいたと言っていた。
覚えていれば使ってるかもしれない。
俺は一つずつ確認していくと、
一つだけスリッパの変わりにスニーカーがあった。
俺は急いで学校内を探索する。
1階の空き部屋、図書館、保健室、体育館だが1階にはいない
俺は2階に上がり教室を見て回っただが、庵の姿が見当たらない。
3階の教室も見るがいない、残るは俺のクラスのある4階のみ。
俺はゆっくり一つずつ教室を見ようと思ったが、
もし見知らぬ学校に長時間いて安心できるのは
入ったことのある教室
俺は他の教室は見ずに、自分のクラスのドアを開けた。
―― ガラッ!!!
教室の中でポツンと窓の手摺に座り、
外の景色を見ている髪の赤い学生が一人いた。
「庵!!!」
「あ、楓さん」
俺は扉を閉めて、庵に向かって歩いていった。
「いつからいたの?」
庵の手をとると、ひんやりとして冷たい
「ついさっき着きました」
俺にそういって笑う庵
「嘘。手がとっても冷たいよ、ほら窓閉めて椅子に座って」
庵は俺がそういうと言われるまま、窓を閉めて近くの席に座った。
「さっき樹君から『庵がこっちに向かってる』って連絡があって
生徒玄関前で待ってたのに、なかなか会えないからさ・・・・
また怪我でもしてるのかと思って心配したよ。よかった無事で」
「・・・・心配かけてすいません、裏口から入ってきたので」
「・・・・・そっか」
しーんとする静かな静寂を崩したのは庵が先だった。
「楓さん、会えましたか?」
「・・・・・え、会えたって誰に?」
「・・・・・あー、えっと」
庵がとても言いにくそうに天を仰いで、どう言おうかと考えている。
「誰のこと言ってるの、庵?」
「えっと、実はさっき聞いちゃったんですけど・・・・・・
楓さんの好きな人が今日来るんですよね?」
「なっ!!!!!」
俺は余りの驚きに顔を真っ赤にして椅子から飛び上がった。
「ままままま、まさか庵!!!」
「はい・・・・あの、聞いてました。
実は楓さんが此処の教室にいる時に・・・・すみません」
俺はあまりの驚きに口をパクパクと金魚みたいに動かしていた。
聞かれてた?さっき、俺は何を言っていた!!!?
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「楓、来るんなら生徒玄関で待っていた方が良くないか?
あいつ、1日此処にいたけどまだ中を把握できてなかったから」
「そ、そうだね!生徒玄関で待ってよう!!!」
「さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!」
「ネーミングセンス、最悪」
「の、割には顔は嬉しそうですけど楓~」
「るっさい!」
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『さてと、『楓の愛しの君』に会いに行きますか!』
愛しの君=好きな人
もしかして、それで庵は感づいちゃった?
俺が庵を好きだって事をがばれて
それで、庵は俺を・・・さ、避けてた?
「あの、あの・・・あのね庵、その『愛しの君』っていうのは」
背中や掌に冷や汗がビッショリとわきでてくる
「大丈夫ですよ」
「・・・・へ?」
「ちゃんとわかってます。楓さんは今日はその好きな人に
会うのが先決なんですよね。
だから、その今日はこれだけ渡して帰ります。」
楓はそういうと、右手に持っていた紙袋を俺に渡した。
中には、少し大きめの本っぽいものが入っている。
「・・・・・これって」
「チョコ美味しかったです。お礼と言っては何ですが
ホワイトデーのお返しで、俺の撮った写真集を作ってみました。
前に楓さんが気に入ってくれた物とかも入れてあります。
・・・・自己満足の作品だけど喜んで貰えたら嬉しい」
「あ、ありがとう・・・・庵!!!」
―― 庵が撮った写真集!!!
「すっごく嬉しいよ//////」
俺そういうと、庵は寂しそうに笑っていた
「よかった」
―― ズキッ!
・・・・・・あれ?
「・・・・・庵?」
「もう用は済んだので帰ります」
「え!ちょ、ちょっと待って!!!」
久しぶりに庵と二人っきりなのに!もう、帰る!!!?
「駄目でも、帰らないと・・・楓さんの邪魔になっちゃうから」
「邪魔って何?全然、邪魔じゃないよ!!!」
俺は必死に楓の腕を掴んで、帰ろうとする庵をとめている。
「けど、楓さんの好きな人が来るんじゃ・・・・?」
「それは・・・・それは、栄治が冗談で『庵』の事をそう呼んだだけで
・・・・俺は、今日は庵をずっと待っていたんだよ」
「・・・・俺を」
「そう、庵を待っていたの!
久しぶりに会えたんだからさ、もっとゆっくりして行って」
「・・・・楓さん」
「ん、何?」
「早とちりして、すみません」
「いいよ、全然。悪いのは全部、栄治だから」
俺はそう言うと、庵は苦笑していた。
けど、さっきみたいな悲しそうな顔をしていないので安心した。
「庵、今から暇?」
「・・・・バイトもないので、暇といえば暇ですが、どうかしましか?」
「俺の家においでよ。今日はカメラ持ってきてるだろうし」
俺は庵の鞄ともう一つ大きめの鞄をさしてそういった。
庵はそれを見て、くすりと笑う
「じゃ、お邪魔してもいいですか?」
「うん、おいで。庵は何時でも大歓迎だからさ!」
「楓さんは俺をのせるのが上手いですね」
赤い夕日の中俺は庵と肩を並べて、俺の家に向かった。
電車に乗ると、庵は疲れたのか寝息をたてて寝ている。
そんな庵を可愛いなーと思いながら、
暇なので庵から貰った写真集を見た。
ほとんどの写真は風景ばかりだが
所々に鳥や犬といった動物が出てくる
最後のページをめくると、俺はクスリを笑った。
樹君もこの写真集を作るのを手伝ったと言っていた。
多分、この写真を撮ったのも、ここに入れたのも
彼の仕業なんだろうな・・・・
「可愛い・・・・」
心の中で俺は樹君に感謝しながら
写真を見つめていた。
END
ここまで読んでくれてありがとうございます!
お疲れ様でした!!!
チョコレート革命
・BL小説
・本編とは関係ない番外編
庵が入院して1日目がたった。
病院に泊まり、目が覚めると目の前には白い天上が見え
そしてベットの横に座っている庵の姿が見えた
最初は「あれ、俺がいる?」と思っていたが
俺が起きた事に気がついた庵が笑いながら
「おはよう、楓さん」
そう言った瞬間に頭の中の眠気が吹き飛び、俺はベットから飛び起きた。
「い、いいいい・・・庵!!!」
「あはは、俺も起きた瞬間に驚きましたよ」
俺は庵の髪や顔や体にさわった
「感触がある・・・夢じゃなくて、本当に・・・・」
「はい、元に戻りましたよ」
そう言われた瞬間、体から力が抜けた
安心して気が抜けたんだ
この入れ替わりの状態が続けば、庵と一緒にいる時間が増えるだろう
けれど、庵に俺の人生を歩ませるのは余りの酷だと思ってもいた。
友人のいない閉鎖的な学園生活
不躾な視線の付きまとう日常
これでは、今までの庵の人生が全て狂い壊れる
「よかった、戻ったんだ」
安心から自然とその言葉がでてきた
「俺も安心しました。あのままずっと楓さんが
ベットの上で寝てるなんて事がなくて、よかった」
庵の顔が安心した気の抜けた顔をしていた。
俺は初めてそんな庵の顔を見ることができて
「おーい、楓。ボーケーとしてないで帰らなくていいのか?」
俺が幸せメモリーに浸っているというのに、邪魔するとは・・・・・栄治のくせに
「帰るに決まってるだろ」
― ガタリ
俺は鞄と白でデザインされたシンプルな袋を手にとって立ち上がった。
「だよな~早く庵君が待つ病院に行って、その袋を渡したいもんな~」
「あぁ、そうだよ。お前と話す労力を歩く速さに加えたいくらいにな!」
「あはは、でた!庵馬鹿!」
「・・・・お前、黙って何処かに消えろ。
庵に迷惑かけたから、他にも買って行く予定なんだからな!」
俺はどんどん廊下を歩く速さを早めているので軽く走っている状態だが
それでも、まだ・・・・栄治は話しかけてくる
廊下の中央にある階段を早足で駆け下りる
もちろん、俺の横にいる栄治もだ
「何、迷惑って?あの入れ替わったこと?」
「・・・・・庵に学校に行かせるべきじゃなかった」
俺の学校生活の事を考えれば行かせるべきじゃなかった。
なのに・・・・俺は、庵に少しでも自分の事を知ってほしいと思ってしまって
「庵は入れ替わって『良かった』って言っていたけど」
―― ・・・・え?
俺は足を止めて栄治を見た。
「良かったって・・・・何で・・・・」
この学校で良かったことなんて無かったはずだ
栄治は俺の顔を見てニコリと笑ってみせる
「庵君ってさーお前が心配するのがわかる位に純粋なんだよなー
真面目って言うか・・・・んー生真面目か?
見た目と中身のギャップがありすぎて吃驚したけどな、可愛い子だよな」
―― ムカッ!!!
庵が可愛いなんてそんな事判ってるけど・・・・俺以外の人間もそう思っている事が
トテツモナク キニクワナイ
「・・・・・お前。俺にライバル宣言でもするきか?」
栄治を無表情で視線だけで見ると、手を左右に振り違うと示す。
「いやいや、全然!」
「・・・・・じゃ、何がいいたい」
「庵君が言っていたんだよ
『・・・・・楓さんは楽しそうですか?』 って」
「・・・・・・」
「あいつ、楓が独りだってわかって悲しそうだったよ」
俺の顔は自然と床に向いた。栄治の顔を見ながら聞けなかった。
・・・・・何を聞いたのか、不安で
「んー、庵君が昔の過去話してくれてさー・・・・
楓が庵を待っていてずぶ濡れになったときに、
庵君が『もう、迎えに来なくても大丈夫ですよ』って言ったら
楓は『それだけはきけない』って言ったって」
あの日は中に入れば良かったと思う
濡れた俺を見つけた庵の焦りようが今でも脳裏に焼き付いている
「・・・・それで、庵は何て言っていたの?」
「んー、自分みたいな何処にでもいる学生で髪赤いし喧嘩っぱやいし
こんな奴ほっとけばいいのにって・・・けどさ、その後に庵君言ったんだよ」
―― ・・・・けど、その考えが変だったんですね
―― 楓さんも 何処にでもいる学生の一人 なんですよ
「楓、お前を 何処にでもいる学生 として見れる奴がいるなんて
俺は想像できなかったし、思いもしなかった」
「・・・・・・・」
『今、こんな風に俺と楓さんが入れ替わったのは幸か不幸かわかりませんが、
俺の学校には馬鹿なワンコが二匹と煩い子猫が一匹います。
世話のやける奴らですが、一緒いたら楽しいし落ち着けます。
楓さんがそいつらといて、学校生活を楽しめたらいいなーって思うんです。
今まで気づいて上げられなかった分、学校外であの人が本当に笑えたら
俺は・・・・・嬉しいなって思います』
「これが、俺が聞いた庵の想いだよ」
「・・・・・・そう」
「なぁ、これを聞いても庵にわびを入れないといけないと思うか?
俺はその袋だけでも十分アイツは喜ぶと思うけどな、楓はどう思う?」
「・・・・・・・・持っていけば、庵は気を使うだろうな」
「んじゃ、そのまま病院に行っちまいなよ!」
そういうと、俺は背中を栄治に押されて学校を後にした。
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「庵、今度からさっさと病院いけよな~」
「分かってるよ、二度まで言うな」
「いいや!お前のことだから、気が変わる」
「・・・・・・・・勘ぐりすぎだ」
そう言って、江田と俺の見舞いに来た樹は俺の顔を覗き込んでくる
今、ここで目を反らせば負ける様な気がして目が反らせない
「ねぇ、今日ってまだ楓先輩は来てないの?」
樹の後ろで突っ立て入る江田が俺に話しかけてきた。
「あぁ、まだ来てないけど。何?」
「いや、まだ来てないんだなーと思ってさ」
そういうと、江田はまた俺の身の回りに視線を巡らせる
―― 何なんだ一体・・・・・
「用がないなら、二人とも帰れよ。俺は寝たいんだ」
「なにーーー!折角来てやったのに何だよ!」
「いいじゃん、帰ってあげるよ、庵さん」
『・・・・・・・へ?』
珍しく俺と庵の言葉が合さった。
俺は江田がこうもあっさりと引いたのが信じられなかった。
どうやら、樹も同じ心情らしく開いた口が塞がらない。
「ほら、さっさと帰るよ。んじゃね~」
江田は戸惑う樹を引っ張りながら病室から出て行った。
「・・・・・何だっていうんだ?」
俺は疑問に思ってカレンダーを見た。
今日は2月14日。
「バレンタインデー・・・・」
そういえば、楓さんと約束した日だったな
二人は俺が約束していた事を知っていて帰った?
「だけど、江田のあのあっさりした態度が・・・・なんか不気味だな」
俺はあまり其処に触れないようにして、考えることをやめて
ベットに身を沈めた。
―― ガラリ
病室のドアの開く音がする
俺は視線だけ相手に向けた
どうせ、樹が忘れ物でもしてとりに来たんだろうと思ったからな
けど、ドアの前に立っている人物は予想していた人とは違った
「庵、怪我はどうかな?」
「・・・・・・楓さん」
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ドアを閉めて、俺はベットの近くにある椅子に腰掛けた。
「今から寝るところだった?」
俺がそう聞くと庵は、体を起こして俺を見た。
「あ、いえ・・・・・」
「庵、実は渡したい物があるんだけど」
「・・・・え?」
あー心臓がバクバクしている
俺は掴んでいた白い袋を庵に渡した
「その、あのね・・・・ち、チョコレート・・・・つく、作ったんだ!」
あぁ~俺、ちゃんとした言葉で話せよ~!!!
俺が差し出した袋を庵は驚いた表情をした後に優しく微笑んで受け取ってくれた。
「ありがとうございます・・・・」
「あ、その、ちょっと不恰好だけど、味は美味しいと思うからさ・・・・」
「はい、大事に食べますね」
「・・・・うん//////」
庵はそういって、また嬉しそうにチョコが入った箱を見ていた。
その瞬間、昨日頑張って作って良かったなーとほっとした。
「楓さん」
「ん、何?」
「ホワイトデー、お返しは何がいいですか?」
―― ・・・・・・お返し?
「え、庵・・・・庵が俺にくれるの?」
「あ、はい。あまり高い物が無理ですけど、何か希望はありますか?」
「い、いや・・・・希望・・なんて・・・・・」
心臓の音がさっきの倍、脈打つ早さが加速しいる
そして緊張や混乱の所為か顔が熱くなっていくのを感じる
うわわわわ、どうしよう!どうしよう!!!
嬉しすぎる、庵が俺にくれるの!
何が良いって、もうーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
庵がくれるんだったら、何でも良い!
何でも嬉しいよ/////
あぁ、もう嬉しくて涙がでそうだ!
「な・・・・、なんでもいいよ」
「え、でも・・・・何かリクエストとかありませんか?」
「・・・えっと」
「んー、まだ1ヶ月ありますし、その前までに何かあったら言って下さいね」
「・・・・うん」
そう言って庵がまた俺に笑いかけてくれた。
―― どうしよう、幸せすぎるーーーーーーーー!!!!
「楓さん、中身見てもいいですか?」
「うん、いいよ!」
庵は袋から箱を取り出して、包装を外し箱を開けた。
「・・・・・・カメラの形のチョコ」
「うん、庵。写真好きだからさ、型崩れしたけど頑張ってみました/////」
「・・・・・・・・」
庵はチョコをみたまま固まっている
―― あれ、もしかして 引かれている・・・・・・
カメラの形なんかにして庵にドン引きされてる・・・もしかして?
「・・・楓さん」
―― ドクドクドクドク・・・・
心中穏やかでないけれど、俺は庵に冷静を装って見せた
「どうかしたかな?」
「・・・・ありがとうございます。俺、普通の形のチョコだと思っていたので
驚いたのもあったけと、好きなカメラの形のチョコが貰えるなんて
本当に嬉しい。・・・・・ありがとう、楓さん」
―― ドキッ!!!
そう言って、庵は花が咲いたようにふわりと綺麗に笑った。
今まで、いろんな庵の笑顔を垣間見たことがあったけど
こんなに嬉しそうで無邪気で色気のある笑顔は
初めてで・・・・・
―― うわぁ・・・・・っ!!!!
心臓をわし掴みにされた
この瞬間、俺はまた
新田庵に惚れてしまったんだと思う
「楓さん。俺、ホワイトデー頑張りますね!」
「・・・う、うん//////」
顔がまともに見られない
どうしよう、顔が熱いし、なんか頭に血が上っている感覚がする
けど、それでも見たい
庵の笑顔を見たいけど
今、見たら心臓があの笑顔に耐えられなくて止まってしまいそう
けど、もう二度と拝めないかもしれないし!!!!
そんな葛藤をしている中、庵は俺に話しかけてくる
「これを見ていると、昨日聞いた言葉が本当なんだと実感しました。
俺が『ただの他校の後輩』って言ったら楓さんは俺を『特別』だと
言ってくれました。今日、一人で病院にいたらなんだか昨日の事が
夢だったんじゃないかと思ってきて、ちょっと不安だったんです。
けど、このチョコレート見ていて嘘じゃないんだって思えて嬉しい」
―― 昨日、俺って何て言ったっけ・・・・
『違うよ、庵は別格なんだよ。庵はね、俺の特別だよ』
―― あれ?・・・・もしかして俺、勢いついて
告白しちゃった!!!!
「・・・・・庵?」
―― もしかして、庵。俺の気持ちに、気づいた?
「楓さんと俺って、ただの先輩と後輩じゃなくて」
―― 先輩、後輩じゃなくて・・・・!!!
「年の差なんて関係ない」
―― 関係ない
「友達なんですね!俺、嬉しいです!!!」
―― と、友達?恋人じゃなくって!!!
「え、庵・・・・その解釈って何処から」
俺が慌てて、何とか訂正しようと思ったが庵が行き成り焦りだして
俺に謝ってきた
「す、すみません!もしかして、俺の勘違いでしたか!
これ、友情チョコなんだと・・・・・」
―― 友情・・・チョコ・・・・・
俺は肩の力抜けた
脱力状態です
訂正したかったけど庵の悲しそうな顔を見ていたら
そんな事切り出せなくなって・・・・
「ううん・・・・それは『友情』チョコだよ」
って言ってしまった。
庵がそれを聞くと
安心した顔をする
「・・・・よかった」
言った後に後悔したけど、庵の嬉しそうな安心した顔を見ていたら
チョコをあげた理由なんてどうでもよくなった
自分の気持ちの半分も伝わらなかったけど
先輩から友達に格上げになったんだし今回はこれで良かったんだろう
だって俺は
庵が喜んでくれればいいんだから
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後日聞いたことだが
俺を痛めつけた三馬鹿は
栄治によって片付けられていたらしい
END
お疲れ様です。
ここまで読んでくれてありがとう!!!
無駄に長く、誤字脱字が多々ありましたが、最後まで
付き合って頂けて嬉しいです!(ペコリ)
本編の方も頑張って創作していきたいと思います!
・BL小説
・本編とは関係ない番外編
心臓の音が酷く大きくきこえる。
―― ガタタタン ガタタタン
頭上からは電車が走り通る音が聞こえてくる
靴裏で踏む土と草の音、俺の横で流れる川の水音
そして、俺の目の前で汚い笑みを浮かべる男達の声
あの校門の前では目立ちすぎたので
俺はこいつ等を、この人気の少ない川原に連れ出した。
そして俺は、こいつ等に一番ききたい事をきいた。
「何故、『俺』を襲った」
「あれれ~?前に言わなかったっけ?」
「忘れたから近づいたの?あははは、マジ笑えねー」
「馬鹿なんしょ、教えってやったら~♪」
「もう一度きく。何故、『俺』を襲った!」
真と呼ばれていた男が俺に一歩一歩近づいてくる
「前にも言ったよな『楓様に近づくなって』」
「・・・・・か、えで?」
「そ、三宮司楓様。あの人は、お前が近寄っていい人じゃねーんだよ!」
「・・・っ!」
襟首を勢いよく掴まれて、わき腹が痛む
俺がわき腹を庇っているのに気づいたこいつは俺にある提案をしてきた
「もう一度だけチャンスをやろうか?」
「・・・・っ、チャンス?」
「そう、ラストチャンス」
そういうと男は俺を放すと地面を人差し指で指し示した。
「ここで、俺に土下座しろよ。そうしたら、今回のことは許してやるぜ?」
「お前っ・・・・こんな事してただですむと思ってるのか!」
「くははは、何だよ・・・その脅し、マジで笑える。
俺達知ってるんだぜ、お前に何したってお前は楓様には絶対にチクらないって」
―― ・・・・・・え?
「噂かと思っていたけど、本当にチクらねーもんな~素晴らしいね~
まぁ、理由は同感できるぜ『そんな事で楓様に迷惑かけたくない』って気持ちはな」
―― ドク ドク ドク・・・・
「・・・・・迷惑を・・・かけ・・・・・たくない?」
「そうそう・・・・・で、土下座するの、しないの?」
庵はよく喧嘩で怪我をしているけど、それは全部
―― 俺の所為だったのか?――
いつも守りたいと思っていたのに
守られていたのは 俺の方 だった
――ザリッ
ひんやりと湿った土の感触が手のひらに伝わってくる
腰を曲げるとズキリとわき腹が痛むが、俺は徐々に頭を低めた
真の後方から男達二人の笑い声が聞こえてくる
『マジで土下座してやんのー!!!」
『あははは、だっせー!!!』
腹が煮え返るくらいの怒りが沸いてくる
俺の目の前にいる男はうっすらと口に笑みを浮かべた
男の顔が俺の頭上で見え
そして、男の左足が痛めているわき腹めがけて
蹴りつけてきた。
「―っ!!!!!」
勢いよく蹴られた所為で体が吹っ飛び、傷口が開き
押さえている手の隙間から血がじわりと服に滲んでくる
― くそっ、俺の馬鹿が!
「お前って本当に・・・・馬鹿だな?こんなんで許すわけねーだろうが」
真は俺の押さえている方の手を掴み、仰向けにすると
俺の上にのしかかって首を締め出した
「はっ、はな・・・っ!!!」
「あははは、苦しそう。もう一掃、死んじゃってくんねー邪魔だからさ」
首を絞める腕を外そうと手を掴むが、傷の痛みと息苦しさが手伝って力が入らなかった
くそ、目の前が霞んでくる・・・・・
「楓ぇえーーーーーーー!!!!!」
―・・・・え?
俺の名を呼ぶ声が聞こえると思うと
男の手が俺から離れて、体内に一気に空気が入り込んできた
「―っ、・・・げほっ!!!」
男はもう俺には目もくれず、近づいてくる人物に目を奪われていた。
「・・・・・楓さ」
「退け、邪魔だ!!!」
―― バシッ!!!
俺の上にのしかかっていた男は目の前から消え、
変わりに俺の顔が泣きそうな顔で、俺を見ていた
「・・・っ、庵・・・ゴホッ!・・・はーはー・・・」
「なんで一人でこんな所に来るんですか!馬鹿かアンタは!!!」
「・・・・い・・おり?」
―― ・・・・・・もしかして、怒ってる?
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心臓が止まるかと思った
心配で樹に連絡をとってみれば、楓さんが三馬鹿と何処かに行ったと聞いて
心臓が耳のすぐ傍にあるほどに脈打つ音が大きくなって
不安で不安で
俺の所為で楓さんに何かあったらって
楓さんを川原で見つけたと思ったときには
もう、ボロボロに傷ついていて
なのにあいつ等はまだこの人を・・・・・
後、少しでも遅かったらどうなっていたかと思うと
考えただけでも
ひんやりと冷たい手が俺の頬に寄せられる
上から下へとゆっくり、優しく撫でてくる
その撫でている相手は苦しいだろうに、痛いだろうに
嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「・・・・庵、ごめんね。傷が広がっちゃった。
病院行って早めに直そうかと思ったんだけど」
「いいんですよ!そんなこと!!!」
俺がそう怒鳴りつけると俺の腕の中で横たわっている楓さんは
目を見開かせて「・・・ごめん」と苦しそうな顔をしている
「・・・・あ」
胸の奥がズキリと痛む・・・・
俺はそんな表情が見たいんじゃなくて
「・・・っ、違う・・・本当はそんな事が言いたいんじゃないんだ」
「・・・・いお」
「はーい、お二人ともお取り込み中失礼しマースなんだけど、
救急車が着いたから、中に入ってきてよ」
樹の指差す方向には救急車がいつの間にか待っていた。
「何度呼んでも返事しないからさ~」
「悪かったよ、樹」
俺はもう一度、楓さんを見た
「楓さん、もう・・・・無茶なことしないで下さい」
「・・・・うん、ごめんね」
そういってまた、寂しそうに笑った
-----------------------------------------------------------------------------------------
救急車に乗り込むと設置されているベッドに寝るように指示された。
予想以上に止血が酷い所為だろう
俺が寝ている横では庵が心配そうな顔で俺を見ていた
体温が徐々に下がっているはずなのに
庵が握ってくれる手だけが血が通っている様に暖かい
「・・・・・・なんか、幸せだなー」
「何、何ですか楓さん」
「んー、なんでもないよ」
小さな声で呟いた所為か、庵にはこの呟きが聞こえなかったらしい
救急車はけたたましいサイレンの音を鳴らしながら病院に向かった
病院につき傷の手当てを受けるが、傷が酷い所為で数週間入院することになった。
今は部屋が空いてない所為で一人部屋のベットで寝ている
「なんだか凄い大事になっちゃったね」
「・・・・楓さんが無茶するからですよ」
楓はベットの傍に椅子を置いて、りんごを剥いてくれている。
しゅるしゅると手際よくりんごを剥いていくが、庵の表情は川原で会った時のまま
怒ったような表情のまま
―― ・・・・どうしたら、機嫌直してくれるんだろう?
しーんと静まり返った室内に声を発したのは庵が先だった。
「楓さん、無闇に知らない人に着いて行かないで下さいね」
「うん・・・・・ごめんね。気をつける」
俺がそう謝って庵を見ると、庵は何故か悔しそうに両手を震わせていた。
「・・・・庵?」
「・・・・すいません、俺は怒れる立場じゃありませんね。
あいつ等が楓さんに怪我をさせたのは俺の所為だ」
「本当は俺が傷をおって、俺がそこに寝ているはずなのに!!!」
「・・・・・庵の所為じゃないだろう?」
俺は庵の手からりんごと包丁を外してすぐ傍にある机に置いた。
その動作を庵は静かに見ている
「庵が狙われたのは俺の所為なんだろう?あいつ等が全部話しくれたよ」
「・・・・・そう・・・ですか」
庵は下を向いたまま俺を見ていた
その行動が何故か歯がゆくて、両頬に手をそえて庵の顔を俺に向かせた。
「なんで俺に言わなかったの?」
「・・・・・・」
「俺に迷惑がかかるから?」
「・・・・っ、それは・・・・」
庵の顔からは苦渋の表情が見えた。
俺は庵の頬から手をすっと離して、カーテンを開けて空を見上げた。
外は暗く、町の明かりが輝いている。
「ねぇ、庵。俺って庵にとって何かな?ただのお荷物?」
「ち、違います!!!」
俺の後方で椅子が倒れる音がした。
ガラスが鏡の効果を表して俺には庵の戸惑った慌てた表情
そして、庵には前髪で隠れた俺の顔が見えている
「じゃ、なんであいつ等の事も怪我の事も言ってくれなかったの?」
「それは、楓さんに迷惑かけたくなかったんだ!」
「俺は別に庵が困っているなら何だって手を貸してやりたいんだ!
庵が力を貸して欲しいって困ってるって言ってくれれば、俺は!!!」
「駄目だ!!!」
俺はゆっくりと後ろを振り返り庵を見上げた。
庵は今にも泣きそうな顔で俺を見下ろしてる
「・・・・庵」
庵は両手で顔を隠して、俺に叫んできた。
「そんなの駄目なんですよ!楓さんは俺だけに優しいわけじゃなくて
皆に優しくて平等に接していて、けど、俺はそれを勘違いしそうになって
だから、だから・・・・少しでもそう自覚するために、俺は・・・・
自分に違うと言い聞かせてるのに、周りはそれは違うって言って
俺にそう思い込ませようとする。
もし、それが本当でも俺はそんな優しさに甘えちゃいけないと思ったんだ!」
庵の心の叫びに
心が打ち震える
好きな人が悲痛な声をあげているのに嬉しいなんて
キチガイにもほどがあるけれど
顔を隠している庵の両手掴んでどかし、彼の顔をまっすぐと見据えた
脅えた瞳
けれど とても澄んだ綺麗な瞳だった
「なんで、俺に甘えちゃいけないの?」
「・・・・っ~~~」
「なんでか教えてよ、ねっ・・・・庵?」
俺が庵に微笑むと庵は顔を赤くさせて俺から顔を背ける
逃げようとする庵に、俺は掴んでいる両手で押さえる
「・・・・楓さん、放して」
「話すまで放してあげない、この態勢って結構傷が痛むんだ」
「・・・・あ」
俺がそういうと、優しい庵は気まずい顔をしながら俺に捕まった。
俺は庵にもう一度きく
「庵、なんで?」
庵は戸惑いながらも、その言葉を口にした
「俺は楓さんをとても尊敬しています。
そんな、楓さんが俺を好きだっていうのが勘違いだと、
・・・・・俺は立ち直れないから」
「・・・・そっか」
庵も俺と同じで不安だったんだね
「あの木の下でも、その事を考えていました。
だから、その所為で俺達は入れ替わったんだと思うんです。
・・・・・・すみません」
「いいよ・・・・全然、ていうか庵と入れ替われて良かったと思うし」
「・・・・え?」
庵が驚いた顔で俺を見てくる
その顔が妙に可愛くて俺は庵をベットの端に座らせてそっと抱きついた。
「・・・・・楓さん?」
「俺は庵の事が好きだよ。何をされても迷惑だなんて思わないほどに
ていうか逆にかけて欲しいぐらいだよ。
庵、もっと俺を頼って、何でも話して、・・・・俺はそれが嬉しいから」
「でも、俺はただの他校の後輩で」
「違うよ、庵は別格なんだよ。庵はね、俺の特別だよ」
庵から離れて彼の瞳を覗き込む
まだ、その瞳は不安で揺れている
「だから、他校の後輩じゃないんだよ」
俺がそういうと、楓は俺の片手に触れて目を瞑り「はい」と嬉しそうに言った。
俺もそれを見て庵に笑いかける
庵は今日は俺の付き添いで病院に泊まり、眠りについた。
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目が覚めると白い天上が見えた。
あぁ、そうか
昨日は病院に泊まったんだっけ
起き上がろうとするとわき腹がずきりと痛んだ
「・・・・え?」
俺は自分の脇を見る
すると、服が私服ではなく病院内で着ているもの
昨日、楓さんが着ていた服?
「・・・・・・あ!!!!」
俺はベットから降りて、洗面台にある鏡を見た。
包帯で巻かれた腕、赤い髪、見慣れた顔
「元に戻っている」
俺は足音をたてづに楓さんが寝ているベットに近づいた。
一人部屋だともう一つ、予備でベットを用意してもらえた。
といっても、今回は何故か特別にらしいが・・・・
楓さんが寝ている
何処も怪我をしていない
幸せそうな顔で寝息をたてている
― 違うよ、庵は別格なんだよ。庵はね、俺の特別だよ
― だから、他校の後輩じゃないんだよ
カーテンの向こう側から眩しい朝日の光を感じる
今日が始まる
昨日とは違う 時間が
「楓さん、ありがとう」
・BL小説
・本編とは関係ない番外編
:注意:
血やナイフが出てきます!
苦手方はお気をつけ下さい!!!
――― キーン コーン カー・・・ン
授業が終わり、クラスメイトは皆、帰宅しようと席をたって教室を出て行く
「楓、俺たちも帰ろう」
「あぁ、はい」
俺は慌てて、鞄に教科書などをつめて教室のドアの前で立っている
栄治さんに駆け寄った。
「あぁ~、もうマジで癒されるな~楓が俺に駆け寄ってくる日が来るなんて~」
そういって、栄治さんは何故か感動に打ち震えていた。
―― 栄治さんって、楓さんとどんな幼馴染なんだろ・・・・
廊下を歩きながら、学生玄関に向かうが窓の外にバイク置き場が見えた。
さすが金持ち学校。自転車なんて一台もなく、高そうなバイクがズラズラ並んでいる。
校門の前には何台もの車が列をなして、学生を乗せている。
なかなかの規模の違いに、頭が痛くなりそうだった。
「おーい、真。今日は行くの~♪」
声がする方に視線を向けるとバイク置き場に近づく三人の男達がいた。
「あぁ、あいつのとこ?信は暇なわけ~?」
真と呼ばれた男は制服を着崩し、髪は明るいブラウンに染められている。
その男の後について来ている男二人は一人は短髪で銀色に染め、
もう一人は長い髪を後ろで束ねている。
銀色に染めている信という男が答える
「あれは傑作だったよな~、すぐにぶっ倒れたからさー」
その返答を聞くと髪の長い男がニヤニヤとしながら答える。
「信は行く気満々だと俺は解釈しました~♪」
「信も卓も行く気満々っすね~」
俺はその会話を黙って聞いていた。
その様子に栄治さんも窓の外に視線をやる。
「あいつら、三馬鹿トリオじゃんか」
「・・・・・知ってるんですか?」
俺は栄治さんにそう聞いたが、視線はその三馬鹿に向けたままだ。
「あぁー、テストでいつも最下位をとる奴らだ。
最下位を毎回横列であいつらが並ぶもんだから、
そんなあだ名が作られたが・・・・あいつらが気になるの?」
「・・・・・っていうか、会ったことも話した事もあります」
「・・・・え?」
そう、あの三人とは会ったことがある
「俺はついこの前、あいつらに捕まってナイフで刺されましたから」
それは、忘れもしない4日前のことだ・・・・・
俺は学校帰り、樹たちと別れてCDショップに向かっていた
そして、その日は雨が降っていて視界が悪かった
俺は人の波に逆らっていたので歩きにくかった。
人にぶつからない様によけながら歩いていたんだが
―― ドンッ!
俺は人とぶつかってしまったので、慌てて謝った。
『すいません、大丈夫・・・』
『・・・・・・』
相手の顔を見るが黒い傘で鼻から上が見えなかったが
―― 口に笑みが浮かんでいる?
『ねぇ、君が「赤髪の新聞部の 新田 庵」?』
「・・・・・・そうだが」
『へへ~、やっぱりな~』
男はそういいながら、またニヤニヤと笑い出した。
どうやら、こいつは俺にわざとぶつかって来たらしい
俺はその男の態度を不快に思い、その横を通りすぎようとした
・・・・・・・だが・・・・・・・・その瞬間
――――― ド ス ッ !!! ―――――
『逃がしませ~ん♪』
『ッ!!!!!!』
その声と共に俺は脇腹に痛みを感じた
横を見ると、髪の長い男と銀髪の男が楽しそうに笑いながらたっていた。
痛みがする脇を見ると、小型ナイフが刺さっている。
『これは警告です。もう二度と楓様の近くに近寄るなよ』
傘で顔が見えなかった男がそう言うと、それが合図だったかのように
その三人は走って俺の視界から消えた
楓さんを崇拝しているのは、この学園以外にもたくさんいる
制服を着ていなかったあいつらが何処のどいつかなんて検討つかなかったが
「まさか、こんな所にいたとはな・・・・・」
俺の説明を聞いていた栄治さんが恐る恐る俺に質問してきた。
「なぁ、その『刺された傷』って治ったのか?」
「・・・・・いえ、まだ。というか、楓さんと交換する前までは包帯巻きつけて
自然治癒能力で治そうと思っていたので」
「・・・・・ようするに放置状態にしていたと」
「・・・・・はい、全然治ってません」
俺は栄治さんの目を見れずに視線を下に向ける。
栄治さんはガクリを肩を落とした。
「何か薬塗ったか?医者は?」
「・・・・念のために持ち歩いていた薬は昨日塗りましたが、
医者の方にはまだ行ってません」
「すぐに医者に行ってきてくれよ~」
「はい、すみません。まさか、楓さんと入れ替わるとは予想外で」
俺がそう答えると、栄治さんは俺の肩に手を置いて自分の方に体を向けさせた。
その動作で自然と栄治さんの顔が視界に入る。
その表情は、何故か怒っていた
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「・・・・栄治さん?」
なんでこの子は、他人には優しいのに
自分には・・・・・
「庵君、そうなってなくても・・・もっと自分の体を労わってくれ
君に何かがあると、きっとアイツは・・・・」
楓はきっと泣くだろう
心の底から君を心配して泣くだろう
「アイツって?」
「・・・・君の事をとっても大事にしていて、いつも心配している奴だよ」
俺がそう言うと、庵は苦笑した。
「そんな人、いるわけありませんよ」
そう言った、庵君の表情はどこか寂しげだった
俺はそれを見て一度息を吸っては吐いて、また庵を見た。
「いるんだよ。俺は知ってるんだよ、お前のことそう思ってる奴を!」
「・・・・・はぁ」
その顔は全然、俺の言ってることを信用していなかった
言いたい
その相手が 三宮司 楓 だと
そうすれば、毎回学校に迎えに行くことや
楓が部屋にあげたことなどから
俺の言ってることが 本当 という 事実 であることが
分ってもらえるのに!!!
「すいません、そう言って貰えるの嬉しいですが・・・実感が・・・」
「わかった、今はいいよ。けど、もっと自分のことを大切にしてくれ」
「はい」
そういって庵は俺に優しい笑みを返した。
バイク置き場から、けたたましいエンジン音が響いてきた。
そして、三馬鹿の陽気な叫び声も聞こえてくる
あいつらが庵を襲った
「なぁ、あいつら今から何処に行くんだと思う」
庵を見ると、真剣な眼差しで
もう見えない三馬鹿たちを見ていた
「わかりませんが、『俺』の方に行ってないことを祈ります」
俺と庵は一抹の不安を抱えながら学校を後にした。
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「庵、今日の部活はどうする?」
「・・・・んー出た方がいいかな?」
俺の席の前に座っている樹君が「うーん」と悩んでいる。
「庵は今『怪我』してるからな~、病院行って見て貰った方がいいし
今日は休んだほうがいいと思います。先輩には俺から連絡しときます」
「そっか、ありがとう」
「俺は他に寄る所があるんで生徒玄関まで送りますよ」
そういって、樹君は席をたった。俺もそれに続いて席を立つ
「大丈夫、何度かきたことがあるから覚えているよ、ありがとう」
俺は樹君にそういうと、鞄を掴んで廊下にでた。
後方で樹君が「またな、庵」と言って手を大きく振っているので
俺も樹君に手をふり、生徒玄関に向かった。
下駄箱から庵の靴をだして、内履きを入れる
少し屈んで靴を履こうとすると脇腹がズキリと痛んだ。
俺はそれを上から優しくさする
「やっぱり、庵・・・・病院行ってなかったんだな~」
―― 部活とかが忙しくて、行く暇がなかったのかな?
庵は自分以外の人に優しい
けど、自分の事になると
まるで興味がないかのように無頓着なる
今回のこの傷がその例の一つだろう
そんな彼を見てると
心配で目が離せなくなるときがある
俺は庵の力になりたい
彼を助けたい
「・・・・よしっ、帰る前に病院に行って傷を見て貰うぞ!」
俺は靴のかかとを床にコンッとあてて、生徒玄関から出て門に向かった。
すると、門の前にはバイクに乗った三人の男がいる。
上着を着ていて最初は分らなかったが、上着から見える見覚えのあるズボン
―― うちの学校の生徒?
男達はエンジンをふかして遊んだり、門を出入りしている生徒を観察している
―― あいつら、ここの生徒に何の用なんだ?
俺がそう思ったとき、その複数の男の一人と目があった
すると男はその瞬間に ニタリ と俺に笑ってきた
「い~おり君、久しぶり~」
俺と目があったブラウン色をした髪の男がバイクから降りると、
後の二人も笑いながらバイクを降りて俺に近づいてくる
「・・・・・・・・・」
「あれ~れ?もしかして、俺たちのこと覚えてない?」
「お前達、誰だ?」
俺が真ん中にいる男を睨む、男はまたニヤニヤと笑い出して
自分の脇腹を人差し指でさした。
「こ~こ、 ドスッ! ってナイフで刺したの、覚えてないの~?」
「!!!!!!!」
その言葉を聞いた瞬間にカッと頭に血が上った
こいつ等が
庵を 傷つけた 人間!!!
・BL小説
・本編と関係ない番外編
昨日も樹達と馬鹿騒ぎをして見ていた空
「栄治さん・・・・」
「ん、何?」
俺が栄治さんに視線を向けると、栄治さんは俺に笑いかけている。
楓さんといい栄治さんといい、笑うと本当に美貌が浮き彫りになる。
「栄治さんは、この学校に通っていて楽しいですか?」
「んーまぁ~、可愛い女の子もいるし、セクシーな英語の先生やツンデレな可愛い後輩もいて
まー楽しいとは思うけど」
「・・・・・楓さんは楽しそうですか?」
「・・・・・・・・」
楓さんは確かに尊敬できる素晴らしい人だと思う
たくさんの人に崇められ 尊敬される
学校を代表する人だとは知っているが
毎日、笑っている たくさんの人に囲まれている
けど 楓さんは 独りだった
「楓さん、俺のこと学校までいつも迎えに来てくれます。
雨の日も雪の日も風が強い日でも、どんな時でも待っていてくれます。
前に雨が強くて待っていた楓さんがびしょ濡れになって
言った事があるんです 『もう、迎えに来なくても大丈夫ですよ』 って
・・・・・楓さん、何て言ったと思いますか?」
「・・・・・・・・・」
『 それだけは きけない 』
「そう言われました。そのときは慌てましたよ。
俺って別に何処にでもいる学生ですよ、しかも髪が赤くて喧嘩っ早い馬鹿な野郎
そんな奴、ほっとけばいいのにって思った・・・・けど、その考えが変だったんですね」
「どんな風に?」
「楓さんも 何処にでもいる学生の一人 なんですよ」
「楓さんは、ただちょっと綺麗な容姿で、頭がよくて、礼儀正しくて、要領がいい学生。
学校って言う閉鎖空間の中で彼は人の言葉に縛られて、息苦しかったと思います。
俺は、それに気づいてあげられていなかった」
『庵、今日ね。家庭科で編み物習ったんだ』
『男でも編み物なんて習うんですか!!!』
『・・・・ごめん、嘘。ちょっと挑戦してマフラーなんてものを作ってみたんです』
『へ?なんで、マフラーなんか』
楓さんがチラッと俺を見た後に
学生鞄と一緒に持っていた紙袋の中に手を入れて
その取り出した物を俺の首に、そっと置いた。
『庵の首元が寒そうだったから』
そういって笑った彼はとても無邪気だった
俺よりも一つ年上とか 他の学校の先輩とか
そんな事 全て忘れて
ただこの人が俺のために作ってくれたという事が嬉しかった
「今、こんな風に俺と楓さんが入れ替わったのは幸か不幸かわかりませんが、
俺の学校には馬鹿なワンコが二匹と煩い子猫が一匹います。
世話のやける奴らですが、一緒いたら楽しいし落ち着けます。
楓さんがそいつらといて、学校生活を楽しめたらいいなーって思うんです。
今まで気づいて上げられなかった分、学校外であの人が本当に笑えたら
俺は・・・・・嬉しいなって思います」
--------------------------------------------------------------------------------------------
心臓が止まる
そんな衝撃
・・・・というのはこういう事なんだろうか?
俺の楓の印象は 綺麗な人形 だった
出会った当初から綺麗な容姿をしていた
凛とした姿に誰もが目を引かれた
時を増すごとにその視線の数も増えていった
けれど、彼は決して表情を表に出すことはなかった
ただ其処に飾られている一体の人形のように
人と孤立してる存在だった
俺は幼馴染という名目上よく楓の傍にいた
それは、彼の傍には決して人は寄り付かないからだ
人は自分よりも秀でているものに
憧れるか敵意を表す
そんな視線にも楓は何も思わない
『楓は悲しい事とか嬉しいことってないの?』
中学の頃、俺はそんな疑問を楓にきいた
あまりにも表情を崩さない楓
俺はそれまで感情を表に出すのが下手なだけなんだと思った
人ともあまり関わる事がないからきっと苦手なんだろうと
けど 違っていた
『そんなもの感じたことないけど』
『・・・・・え?』
『そんなのあって、何か特でもあるの?』
彼は本当に 人形 だった
数ヶ月前まではな
「栄治さん!すいません、楓さんを・・・立派な幼馴染をただの学生なんて!」
「いいじゃねー、だって楓も ただの人間 だもんな~」
俺が笑っているので、楓の外見をした庵も笑っていた
どんなきっかけで二人が出会ったのかは知らない
けれど
楓が何で彼に惹かれたのかはわかった
『俺は、庵の事が好きなんだよ!』
そういって真っ直ぐと見つめる瞳は生きる力を発していた
庵が見上げている空を仰ぐ
風が強いが心地よい日差し
たくっ、庵君の世話ぐらいしてやるよ
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「・・・・・庵ってば本当に凄いんだな~イデッ!!!」
樹君の頭に樹君の幼馴染の雄飛君のゲンコツがおりた。
「樹、楓さんにそんな口の利き方はないんじゃないの?」
「んだよ、雄飛。今は楓さんじゃなくて、庵だろーが!
ここはため口で話したほうが普通ってもんだろー!」
「・・・・樹に正論をはかれるとは」
「同感です。雄飛先輩!」
「なんだよ、お前らはーーーーーーーーーーー!!!!」
「えーっと、落ち着きませんか?」
現在は中庭に設置されている机と椅子に腰掛けて、
樹君と雄飛君と江田君の四人でお昼を食べている
俺の目の前にあるパンは、樹君が4限目が終わってからダッシュで購買まで
買って来てくれたので山の様にある
彼が、購買から戻ってきたときには腕にはパンがたくさんあった。
「楓さん、食べなグッ!!!」
樹君の隣に座っている雄飛君が頭をはたき
樹君の前の席に座っている江田君が足を踏んだらしい
今日何度目になるのかわからない、彼の叫び声がまた中庭に響いた
「・・・・この、鬼、悪魔、お前らなんて地獄に落ちればいいんだ~」
樹君は机に突っ伏しながら、うな垂れ、
その光景を見て横にいる雄飛君が溜息をつく。
「あーはいはい、樹が庵さんとちゃんと言えればな~」
「るっさい!それぐらいできるはーーーー!!!」
「あっそ・・・・」
なんだか、面白いコンビだなーと俺は二人に釘つけになったが
「あ、庵さん。馬鹿がさっきから煩くてすみません」
そういって、俺の横にいる江田君は謝ってくる。
江田君は可愛い子なんだよな
目が大きくて、背も俺よりも低くて、髪もさらさらで。
樹君と付き合っているらしいけど、少し心配になる
庵はこの子にときめいたりするんだろうか?
胸の奥がチリチリとしだす
俺はそんなマイナスな思考をとめるために、皆に疑問をなげかけた。
「皆はどうして、俺が楓だって受け入れたの?」
三人は俺を見ていたが、それぞれの顔を見合わせた後にまた俺を見た。
そして、始めに樹君が言葉を発した。
「庵が俺に嘘つくはずないから」
「中学から一緒だけど、庵って嘘ついたら罪悪感からか人の目みなくて
判りやすいんだよね~」
「確かに、新田先輩は言い難いこととかは、嘘は言わずに交わしますね」
「・・・・・・皆、庵の事信じてるんだね」
俺がそういうと、樹君が笑いながら言った
「だって、俺の友達だからな」
俺の学校にはそんな友達だと言える人はいるだろうか
こんな暖かな空間なんてあっただろうか
人の温もりがこんなに優しいと感じる
庵はこの輪の中で生きてきたんだね
それが何故か嬉しくもあり、悲しくもあった
・BL小説
・本編と関係ない番外編
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妻は死んだ夫の顔についた赤い血を小さな布切れでふき取りました
けれど、いくら拭いても夫の血は消えません
妻の目からは涙がボロボロと流れてきます
気づけば、布は真っ赤に染まりきっていました。
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『校舎の横手の木にハンカチが引っかかっていたから』
『真っ赤な赤いハンカチなんだけど』
俺が木の下であの人の事を考えていた所為で
木があの人を俺の所に導き、呪いをかけた・・・・
「非現実的な発想だな・・・・」
けど、今の現状が非現実的なんだからしょうがないか
「庵、準備できた?」
「はい、出来ました」
今日の朝になっても俺達は入れ替わったままだった。
だが、入れ替わっても明日は来るし、学校もある
俺達は別々に入れ替わったまま互いの学校に行く事にした。
楓さんとともにマンションを出て、マンションの前で待っている車に乗った。
高そうな黒塗りの車だ。
俺は楓さんに言われたとおりに運転手に告げて、学校に向かった。
昨日の一件を楓さんは決して触れてこない
それは有難かったが、楓さんの気持ちが無性に気になった
今、俺はこの人にどう思われているのだろうか?
楓さんは俺にいつも通りの対応をするだけ
変わった所なんてなかった
車が俺の学校につくと楓さんは運転手と俺に会釈とお礼を言っておりた。
「またね、楓」
「はい、庵さん」
いつもの笑顔が俺に返されて俺はほっとしてる
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車からおりて戸をしめると、車は俺の横を走り抜けていった。
庵が不安がっているのはわかっていた
けど、俺の何がそうさせているのかがわからない
庵に聞くにしてもきっと彼を傷つけるだろう
四方八方塞がりの俺は庵にいつもの対応をするほか思いつかなかった
他の奴だったら別に気にしないさ
けど 庵 が傷つくのは耐えられない
俺は庵の傍にいたいけど
「俺は庵に笑ってほしい」
「庵、おはよう!」
――― びくっ!!!!
俺は慌てて後ろを振り替えると、ここの学生の生徒が立っていた。
「そういえば、何、一人でぶつくさ言ってんの?」
「樹、何だよその口の利き方は!」
「え・・・いや・・・」
えーっとこの子は確か、庵の友達の・・・稲辺樹君と江田国雅君?
「はは、おはよう。稲辺君と江田君」
俺は冷静を装って相手に挨拶したが、その言葉を発した瞬間に相手は
困った顔をして俺を見てきた。そして、俺の耳元でそっと囁く。
『庵は俺を「樹」って呼んでますよ、楓先輩』
・・・・・え?
俺が驚いた顔をして彼を見ると、樹君は舌をペロッとだして俺を見ていた。
まるで悪戯がばれた子供のようだ。
「庵から事情は聞いているんで、学校内で判らないことがあったら聞いて下さい」
「俺の事は苗字で「江田」ってよばれています。何か困ったことがあったら言ってくださいね」
学校内に遊びに行った事はあったけど、授業やクラスメートとの交友関係が
あやふやで少し、不安だったんだけど・・・・
庵、心配してくれたんだ
ありがとう
俺は二人と共に校舎の中に入っていった。
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「楓様、少し話てもよろしいでしょうか?」
運転手が二人になったとたんに俺に話しかけてきた。
「いいですよ、何ですか?」
俺は楓さんらしく振舞うことに徹しようと思ったが、
どんな喋り方をすればいいのかわからない。
「先ほどの方は楓様のご友人でしょうか?」
「・・・・そうですよ」
「とても仲の良い方なんですね。
楓様があの部屋に足を踏み入れる事を許した方は
・・・・今まで一人としていませんでしたのに」
「・・・・・・・・」
楓さんがあそこに人を入れたのは・・・・・俺が始めて?
運転手はそんな俺の戸惑いなど知らずに、どんどん話を始めていく。
「奥様や旦那様すら中にはお入りになることは拒まれました。
私はてっきりご友人ではなく、楓様の恋人かと思いましたよ」
――― こ、恋人って・・・・
「俺に男の恋人か?」
「出すぎたことを申しました。申し訳ありません」
「・・・・・・・・・・」
楓さんほどの容姿ならそれもありだろう
違和感もさほどないし、相手も喜んで一緒いるだろう
けど、相手が俺だ何てことはきっとありえない
初めてあそこに人が入ったなんてそんなこと
俺はしんじはしない
そんな特別は俺にはいらないんだ
車が学校についたので俺は鞄を掴んで、車を降りた
門は俺の学校比べて、高く大きい。
門の両側には執行部という勲章をつけた学生が立っている。
俺は気にせずに門を通ろうとしたが、両側から「楓様、おはようございます」と
背を伸ばしたお辞儀・・・・他の生徒とは違う対応に驚いた。
「あ・・・おはよう、おはよう」
俺は混乱しながらも、二人に挨拶をしてスタスタと門を通る。
そんな俺の後ろでは「俺、目があったぞ!」「朝から楓様見ちゃったv」「挨拶してもらったぞぉ!」
などなど、なんだか大混乱な騒ぎが聞こえる
俺が教室に向かう間も、何十人という生徒に挨拶され、俺はそれに挨拶をして、周りが騒ぐ。
――― 何なんだこの学校は!!!!!!!!!!
楓さんの通う学校は明治からある、ブランド大学との姉妹校だ。
入るには頭も入り、金もいる入る難関な名門高校。
その中でも群を抜いて優秀な三人を、此処では「三大美人」と呼んでいる。
容姿もさることなら、勉学・スポーツ・礼儀作法など見て決められる学校を代表する人物だ。
噂では生徒会長よりも権限があるとか、ないとか・・・・・
今更ながら、場違いな立場と場所に俺は困惑している
なんとか教室につくが、ここで問題が一つ。
・・・・・・楓さんの席って何処だ?
クラスメイトに「俺の席って何処だっけ?」なんて聞くのは、
楓さんの評価を下げてしまいそうでできない。
だが、このままだと席につけない。
全員席に座るまで、待っているか?
・・・・今日、誰か一人でも休んだら二択だよ。
外れたら恥ずかしいじゃないか・・・・
あぁ~もっと手っ取り早くわかる方法はーーーーーーーー!!!
「楓の席は俺の後ろだからついてきなよ」
「・・・・・・・え?」
俺は声をかけられた方を見ると、見目の良い男前の生徒がたっていた。
髪は肩まであり薄茶の髪が太陽の光で輝いてる。
この人間にいいよられた人間はすぐさま陥没しそうなフェロモンも放っていた。
なんというか、外見は軽い男という感じもするが・・・・・
「ほら、突っ立ってないで席に座ろうぜ」
「・・・・へ、は?」
俺は腕を掴まれて、男の言う席に座らされた。
そして、男は俺の席の前に座る。
男は楓さんの机に腕をのせて、俺をニコニコと笑いながら見ている。
俺は緊張しながらも、席まで連れて来て貰ったのでこの人物にお礼をいった。
「あ、ありがとうございます」
「楓はお礼なんて言わないぜ」
「・・・・へ?」
「後、挨拶してる学生は無視して歩き去ればいい」
「・・・・は?」
「授業中は絶対に先生はお前に当てないから、安心しろ」
「・・・・え?」
俺の反応を見た後から、男は俺の耳元で小さく囁いた。
『楓から聞いてないのか?
お前が元に戻るまで学校での生活をサポートする、楓の幼馴染の津田栄治だ』
「・・・・サポート」
津田は俺から離れてまた、真正面から俺を見て笑った。
「そ、俺の事は「栄治」って呼んでくれ」
「あ、よろしくお願いします」
教室に先生が入ってくると、生徒は席につき授業が始まった。
栄治が言ったとおり、先生は俺に当ててこなかった
―― キーンコーンカーンコーン
「終わったー・・・・・・・・」
俺は昼休み、だれもいない屋上に連れて来てもらった。
此処の生活はしんどい。
誰も俺に話しかけようとはしないが、様々な視線がねっとりと体に絡みつく
生徒だろうが、先生だろうが
それは変わりはしなかった
・・・・・気持ち悪い環境だ
「あはは、楓が床で寝転んでやがるーめっずらしい」
「っとそうですね。ちゃんとしないと!」
誰もいないとはいえ、楓さんがこんな格好するわけないよな!
俺が急いで起き上がると、栄治はクスクス笑いながら俺に弁当を差し出す。
「はい、お前のお昼ご飯だよ。あ~、普段の楓じゃなくておもしれーは」
「あぁ、ありがとう」
お弁当を受け取ると、ずっしり腕に重みが伝わる。
・・・・・・・・何が入ってるんだこれ?
「俺の家、ちょっと高級めの旅館とかレストランを経営しててさ、
ちょっとそこのお仕事場の人に作ってもらったんだよ。うっまいぜ」
栄治は女が見たら叫びだしそうな甘い笑みを向けた。
だが、今の俺にはそれどころではない!
「・・・・・ちょっとって」
絶対にちょっとじゃないだろう
そこは絶対に、庶民じゃ入れない場所な気がする!
俺はそう思いながらも、お腹がすいたのには耐えられず弁当を開けた。
大きなお重箱4段重ね
中にはぎっしりと食べ物が詰まっているが
上品な作り、そして食欲をそそる匂いがした
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「・・・・・これ、食べていいんですか?」
「いいよ~、庵君のために作ってもらいましたからね~
ふふ、君の好きなものがたくさん入ってるでしょ?」
俺は弁当を広げた横に転がり、庵を上目遣いでニコニコしながら見ていた。
庵はそんな俺を見た後、すぐに弁当に視線を戻した。
顔は弁当を開けたときのまま 吃驚表情のままだ
「・・・・えぇ、それには驚きました」
「食べてみ、美味しいぞ~」
「はい」
庵はそういうと、もくもくと弁当に手をつけだした
外見は「楓」で中身は「新田庵」
昨日の夜、メールでそう説明文がきて俺は楓が冗談を送ってきたものだと思っていた
だが、疑う俺に楓は俺が秘密にしたい恥ずかしい過去を送ってきた
誰も知らない昔の話
知っているのは楓だけだった
正直、昨日はそんなメールだけのやりとりで半信半疑な面がまだ少しあったが
今、目の前の楓を見て納得する
あの『三宮司 楓』が俺の言うことを素直に聞いたコトがあったか?
その答えは『ない』だ
それに、楓ではありえない表情をする
楓がこの学校にいる間の表情は全て作っている
だが今、目の前にいるこの子は素をだしていた
信じがたいが信じるしかないだろう
――― ブーブーブー
俺は携帯にメールが来たようだ。
その音に庵は食べるのをとめて俺をみている。
新田庵。正直言って、前はあの赤髪やムッツリとした表情しかしらなかったので
あまり良い印象を持てなかったが、結構可愛い奴という印象を受けた
・・・・楓の外見効果も少しあるかもしれないが、それは余り考えないことにした
「気にせず食えよ、メール来ただけだからさ」
「あ、はい」
そう言うと、また庵は食べだした。
――― 可愛い~~~、食っていいって言ったら食った!!!!
俺はそんな風に心の中で叫びながらメールを開けた。
------- 送信者 三宮司 楓
庵の様子はどう?
嫌な目にあったりしてないか?
昨日送ったとおりのメニューを弁当にいれた?
後な栄治
お前・・・・庵を変な目で見てないだろうな?
庵がいくら可愛くても手を出したら
潰すからな
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「・・・・・・・・・・・・」
うわーこれこそ、俺の知っている楓だー・・・・
どうでもいい奴は本当にどうでもよくあしらって
使える奴は幼馴染だろうが下僕の様に扱う
・・・・・このメールの返事、きっと楓の奴そわそわしながら待ってるんだろうな~
愛しの庵君のことだもんね~、気になるよな~
送んなかったら面白いかもしれないが、後が怖いので送ろう
「栄治さん」
「・・・・ん、なーに庵君」
「量多いんで一緒に食べませんか?」
俺は顔を上げて庵を見た。
俺に見られてるからか余計にそわそわしている。
「その、持ってきてくれた人が食べてないのに俺だけ食べるのも・・・・」
「一緒に食べていいのか?」
「え、もちろんです!」
そういった庵は、楓がしない笑顔を返した。
その顔を見せてくれるのも、楓の幼馴染という立場の俺に気を許してくれた所為かな
「楓が心配するのもわかるわ~」
「・・・・・は?楓さん?」
「んにゃ、こっちの話だよ。よし、食って午後も平穏にやりすごすぞ!」
「えぇ、よろしくお願いします」
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